ニップンは7月28日、都内のホテルで業界紙懇談会を開催した。説明会では前鶴俊哉社長が今期および中期的な事業計画と進捗を説明したのち、堀内俊文副社長、大内敦雄専務、木村富雄常務が各事業について詳細を説明した。
中期目標で売上4千億円、営業利益150億円を掲げる同社。前鶴社長は「価格改定による売上増を除いても売上、利益ともに今期計画を達成させたい。今期の事業の流れは順調。ご期待いただきたい」と力強く抱負を述べた。
今期の既存事業(製粉、プレミックス、パスタ、加工食品)は確実に売上を拡大しており、成長分野に掲げる4事業(冷凍食品、中食、ヘルスケア、海外)も好調。冷凍食品の生産能力強化、海外製粉会社への投資についても言及した。
サステナブル経営の取り組みでは、環境保護について太陽光発電や冷食製品で業界に先駆けた紙トレイ導入などの事例を紹介するとともに「お客様、株主、ステークスホルダー、社員をはじめ人々のウェルビーイング実現に向け、人的資本、食と健康を通じ社会貢献していく」と述べた。
海外事業について堀内副社長は、5月に発表していた海外製粉会社Utah Flour Milling,LLC(米国・ユタ州、以下ユタ製粉社)への出資について説明した。今回の出資は、ユタ製粉社がPanhandle Milling社(米国製粉・PHM Brands社傘下)と最新鋭の製粉工場を建設するもの。建設地はユタ州・リッチモンドのスナック工場隣地。新工場はスナック工場と直結し小麦粉を供給する製粉工場として長期契約を締結しており、2024年第4四半期に操業を開始する。なお、スナック工場はPepperidge Farm社(Cambell Soup社傘下)がスナック菓子・Goldfish製品を製造している。需要増加に対応し、約220億円を投じ同製品の生産量を50%引き上げることを発表している。堀内副社長は「ニップンが既に展開している米国内の2拠点とのシナジーも発揮し、海外事業をさらに拡大していきたい」とした。
大内専務は、冷食、中食、ヘルスケア、海外、プレミックス、加工食品の6事業について「今年度は前年度の価格改定が浸透し足元業績はいずれの事業も好調。食品部門の売上高は1割増で推移しており、通期では2千億円を超えそう。だが今後も価格改定を避けられない状況であり、収益については不透明な要素を抱えている。新たな価値軸を繰り出しながら成長軌道に乗せたい」と説明した。
重点領域については、冷凍食品事業が家庭用業務用ともに好調。冷食個食パスタ「オーマイプレミアム」20周年を迎え、記憶に残る販促展開を推進する。中食事業は生産現場の従業員確保に課題が残るものの、生産性、収益性ともに向上しており積極展開を進める。ヘルスケア事業ではフェムテック市場に向け、食品由来の自社製品(セラミド、アマニオイル、マセリン酸など)を採用した商品開発を進める。海外事業はインドネシア工場が今年9月に本格稼働を予定し、需要増加でパスタモンタナの生産ラインを来春までに増強。次のM&A、フードテック事業を模索していく。
基盤領域のプレミックス事業では、人手不足を背景にした顧客の生産性向上を切り口に提案を強化。加工食品事業は、トップラインの上昇を図るとともに安定した収益を追求、美味しさにこだわった商品提案で認知度を高める。「わが家の味」「家庭のきずな作り」を実現する商品展開を進めていく。
製粉事業は木村常務が「国内製粉事業が縮小するなかでも、コスト競争力の向上と収益基盤を強化していきたい。顧客の課題解決策として作業時間や手間を軽減できる提案だけでなく、業態提案にも踏み込んで来春までに提案できる体制を整える」と述べた。