日清オイリオグループの久野貴久社長は、23年度の国内油脂事業について「ホームユース(家庭用)では、食用油の価値向上をベースに適正価格での販売継続と、新たな値ごろ感での市場形成が重要になる。業務用・加工用では機能フライ油や付加価値商品群を中心にお客様の課題解決につながるソリューションを推進し、新たな価格均衡点の形成に努めていく」と語った。
同社の前期連結決算は売上高5千565億円(28.6%増)、営業利益161億円(38.7%増)。原料価格の高騰や為替など、油脂コストは前期比433億円の大幅増となったが、一昨年からの段階的な価格改定によって打ち返し、油脂事業は増益につなげた。
「歴史的な油価上昇に直面するなかで、22年度は適正な販売価格の形成が進んだ」(久野社長)。食品値上げが相次ぐ中で、節約志向の高まりによる影響も一部でみられたが、家庭用では単品№1商品に躍進した「ヘルシーオフ」の拡販とクッキングオイルの構造改革、かけるオイルや味つけオイルの新たな需要開拓の取り組みが奏功。前期の家庭用食用油市場は金額ベースで過去最高の1千800億円を突破し、「市場を上回る販売数量を確保することができた」と手ごたえを示した。
業務用・加工用では、価格高騰による物量への影響はあるものの、長持ち機能を付加した機能フライ油や炊飯油など付加価値商品群の販売額は、19年度比の約2倍に成長。ユーザーサポート体制による提案活動や、MCTを活用した商品開発など、価値共創の取り組みも広がっている。
23年度の見通しでは、大豆・菜種の原料相場はピークを越えた感もあるが依然高値圏で推移していることや、140円に迫る円安など「予断できない状況が続いている。物流費やエネルギーコスト、人件費などのコスト負担も増しており、新たな価格の均衡点を見極めていく」と警戒感を示した。
家庭用では、節約志向による買い控えおよび使い減らしの影響も懸念されるが、食用油の価値向上と新たな値ごろ感での市場形成に向けた取り組みを強化。コロナ禍が収まり、店頭試食の再開が期待される中で、「食用油の新たなおいしさ、使い方を訴求する『味つけオイル』の市場育成を加速させる」考えを示した。
企業価値向上の取り組みでは、PBR改善に向けて資本収益性を重視した経営計画を推進。2030年目標としてROE10%、ROIC7%を新たに設定し、各事業領域で目標達成に向けたKPIを策定。2030年に向けて、国内油脂では営業利益率6%を目標に着実な利益成長、海外加工油脂ではグローバルトップレベルのソリューション企業への飛躍を目指すほか、新たに北米市場で500億円規模の売上創出を図る。