イオンのGMS(総合スーパー)事業は前期(2月期)、営業利益が140億円に黒字転換しコロナ前実績を上回るV字回復を果たした。
この利益改善に最も貢献したのがイオンリテールで、3期ぶりの黒字化となり前々期から143億円損益改善した。
12日、決算発表に臨んだ吉田昭夫取締役代表執行役社長は「イオンリテールでは、2020年度から3年間をリバイバル期間と位置付けた。食品在庫の圧縮や売価変更の削減、そしてネットスーパーなどに積極的に取り組み業績回復したことが黒字化に大きく貢献した」と振り返る。
商品面では、PB強化によって食品が順調に推移して客数が安定。加えて、衣料品や美・健康商品といった荒利の高い非食品事業の回復が利益改善に直結した。
経費面では、店舗のデジタル化やバックオフィス開発などを積極的に推進。
これにより「22年度(前期)は水光熱費への影響が100億ほどあったが、それを打ち返した上で57億円の営業利益を上げることができた。リバイバルプランの実施でコスト構造が改善され、安定的な事業運営の基盤が確立できた」という。
コロナ禍が収束へと向かい人流が回復する中、GMSはコロナ禍で鬱積した需要の受け皿になりつつある。
直近の消費環境について「個人的な認識では非常にインフレと生活防衛でかなり厳しくなるという見立てを年明けにしていたが、印象が変わり、コロナ禍の間に買わなかった商品を買い始めるという消費が起きている。もう1つは、やっていなかったことをするために必要なものを買うという消費も起きていて、今、非常に好調」と語る。
中でも直近では衣料品・アパレルが好調に推移。
「今、国内旅行のウエイトが非常に高く、2・3泊サイズのスーツケースが異常なほど売れている。例えばスーツも、これまで会合がなかったところに、会合に行くときくらいはスーツで行くということで新調される。インフレによる押し下げ圧力も確かにあるが、それを少し上回るようなリベンジ消費みたいなものを今少し感じている」との見方を示す。
このような環境の変化を捉え、売上拡大を図るべく、イオンリテールはエリアの特性に合わせたフォーマットの開発を進めていく。
その好例が、昨年10月にオープンした「イオン天王町ショッピングセンター」(神奈川県横浜市)で「売り場作りも今までと異なり部門を超えた融合を進めている。オンラインでも融合を進めて、顧客とのタッチポイントが強化され、日常使いが主であるネットスーパーで単価の高い“ハレ”の商材の提案をしても使っていただけるようになった」と説明する。
エリア特性に合わせたフォーマット開発によって地域住民へのコミュニティの場づくりも目指していく。
「我々が考えるGMSはライフスタイル全般の商品・サービスのみならず、地域の皆様にコミュニティの場を提供する。そういった地域特性にフィットしたカテゴリーの集積にしていく必要がある。イオンタウンやイオンモールともコロナ前以上に体験型のイベントや体験ができる場に仕上げていく」と意欲をのぞかせる。
なおイオンリテールの売価変更では、適正な売価を算出するAI価格を食品部門に導入し、2023年には自動発注システムのAIオーダーの導入も予定している。
AIの活用について、四方基之執行役戦略担当は「AI価格は特にデリカで売価変更に活用している。今まで人の勘に頼っていたのをAIが最適なタイミングでマークダウン(売価変更)し、結果的に荒利率向上につなげていく。AIオーダーも同様で、歩留まりをなくし必要な分だけ発注できるように進めていく」と説明する。