持続可能な酪農業実現へ 明治と味の素が協業

明治と味の素は、酪農・乳業における温室効果ガス削減に向け協業を開始した。味の素が開発したアミノ酸改善飼料「AjiPro-L」を使って削減した温室効果ガス(以下GHG)排出量の価値をクレジット化し、酪農家に還元する新たなビジネスモデルを通し、サプライチェーン一丸となり持続可能な酪農業の実現を目指す。

3月27日に行われた発表会で明治の松田克也社長は、「牛乳は豊富な栄養源や多くの雇用を創出し地域経済の発展に貢献している一方、牛のげっぷや糞尿に由来するGHGは温暖化に大きな影響を与えている。安定して高品質な牛乳乳製品を提供し続けるにはGHG削減に向けて積極的に取り組む必要がある」など協業に至った背景を説明した。「日本の酪農家に脱炭素化を自分ゴト化してもらい協力してもらうこと」(同)が狙い。

今回活用する「J-クレジット」制度は、省エネ設備や再生可能エネルギー導入によるCO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度。クレジット還元までの流れは次の通り。

①味の素は明治に「AjiPro-L」を供給
②明治は「AjiPro-L」を使用した最適なアミノ酸バランスの飼料を製造し酪農家に販売
③酪農家が飼料を使って削減したGHG排出量を味の素がJ-クレジット化
④クレジットを明治が購入し酪農家へ支払う

一般的な飼料として使用される大豆粕は、高たんぱくだがコストが高く、余分なアミノ酸も多く含むという。これに対し「AjiPro-L」は、通常牛の小腸まで届きにくいアミノ酸が体内に効果的に届き牛の栄養バランスを整えることから、乳量を維持しながら糞尿から発生する余剰な窒素を約25%削減し、酪農家のコスト削減にもつなげることが可能となる。

味の素執行役常務アミノサイエンス事業本部の前田純男本部長は、「GHGを削減すると経済的なメリットにつながることを実証し、社会に実装される機会が得られた。今回の協業を通して酪農畜産業の将来に貢献できる。アミノサイエンスの力で酪農産業に尽力したい」など強い期待を示した。将来的にはメタンを削減する製剤を扱う企業とも協業し、牛の呼気からのGHG削減も実現したい考え。明治は土壌の質を向上させGHGを土壌に吸収する「実現できれば革命的」(同社)なカーボンファーミングに向けた取り組みも酪農家とともに進めている。