九州小売流通 企業間の優勝劣敗が加速 市場環境悪化を懸念

九州エリアの流通企業をみると、昨年度はコロナ特需の反動を受けたことで売上・利益ともに下降に転じる小売企業が続出している。そこで年末商戦に向けてリベンジ消費などの取り込みに努めているが、今期はガソリン価格の急騰に伴う物流費・原材料費の大幅増や電気代の大幅な値上げに伴うコスト負担の増加、メーカー側からの相次ぐ値上げが続いている現況に直面している。

ドラッグストア(DgS)では既存店を中心に売上が下降してきているため、昨年同様に既存客の奪い合いは熾烈さを増している。

コスモス薬品が出店の基軸を関東圏に置いているため、ライバル企業は今がチャンスと九州エリアでの巻き返しに力を入れる。ドラッグストアモリをはじめ、ディスカウントストア(DS)業態ではあるがサンドラッグを親会社にもつダイレックスが出店攻勢を続けている。さらに9月にはイオンウエルシア九州が新たに発足、この流れに参戦する意向を示した。ドラッグ商材と生鮮を含めた食品を扱うワンストップ型の新業態を立ち上げ、福岡県を皮切りに店舗網を構築。九州各エリアに拡大し、2030年までに最低200店舗を目指す方針で、DgS業態の競争激化が予想されている。

DgS業態は薬価が下降傾向にある中、食品構成比を高め来客頻度を上げることで一定の売上をキープしたいという思惑がある。従来のように薬が主、食品が従というオペレーションを大きくテコ入れし食品をメーンにすべく食料品コーナーを拡充。生活必需品のアイテム数を増やして消費者が購買できるアイテムの受け皿を広げることで顧客の取り込み策を推し進めている。坪効率が高く経費率を安く抑えることができることから、仮に少ない客数と単価であってもローコストオペレーションでの運営を実践できるのが強みでもある。

対するSMではイオンのような全国チェーン型、熊本のマルエイや鮮ど市場、宮崎のマルイチのような地域限定型、ハローデイのような売場の見せ方にまでこだわり惣菜やベーカリーを加えて生鮮部門を50%以上の構成比にして購入単価の向上を図る特殊型がある。

一般的な食品スーパー(SM)では生鮮部門の販売構成比が30%以上とされているが、設備投資や高度の鮮度管理が必要とされ、その維持にはコストがかかる。また店舗運営の柱となる生鮮の知見に長けた人材を揃えなければならず、出店を大幅に増やすことに向いていない。

経費率の違いでDS・DgSとの価格差が開いてしまうため、この差を埋める差別化策を講じる必要があるが、コロナ禍で市場環境が大きく変化し、出店戦略や売場施策などの課題が山積する中にあって、SM側では有効な手立てを打てていない模様だ。

加えて10月から最低賃金が改定され、流通企業各社はパートやアルバイトの時給を引き上げた。売上が伸び悩む中、時給の引き上げは収益を圧迫する。中堅以上のSMでは年数億円の負担増になると試算される。夜間早朝や休日勤務の場合は上乗せされる。こういった状況を反映して各社における店舗作業の合理化などの生産性改善がより一層求められるようになってきている。

九州エリアは今後もオーバーストアに起因する価格競争が継続するものと想定される。売価に転嫁できないと利益を圧迫されかねない、厳しい状況に置かれている。こうした中で企業間での収益格差がより広がりをみせてきており、業界再編の流れが加速する可能性もある。引き続き九州エリア各流通業界の動向について目が離せないところとなっている。

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