「商品販売業」から「マーケティング業」へ 西友 大久保恒夫社長

「小売業の二本柱と考えている商品開発力と販売力の強化、製造小売業化を進め、ネットスーパーで№1、デジタルマーケティングで№1を目指す。これが達成できた時、(西友は)食品スーパーで№1になれる」。西友の大久保恒夫社長が№1食品スーパーに向けた意気込みを語った。

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今年は事業の定義を見直す。店舗を作って商品を並べておく「商品販売業」というのが、いままでの小売業という事業だったが、そこから脱却しないと生き残れないだろうと考えている。商品開発まで踏み込む。事業定義を「店舗販売業」から「マーケティング業」へと変えていかないと生き残りは難しいと考えている。

利益が厳しくなってきているが、もともと(小売業は)利益が少なかった。コロナ禍による在宅勤務の増加などにより家で食事を作る機会が増え、売上、利益が上がったが現在、それが(コロナ前に)戻ってきている中で、昨年は減益企業が増えた。利益をあげ、前向きな投資に回していくことで企業は成長していく。価値の創造が利益の根源。価値創造の二本柱は「商品開発力」と「販売力」。これを強化していくことが必要。その柱を立てる基盤を整備していくことも必要で、それが「教育」と「情報システム」だ。西友を、価値を創造し利益をあげられる小売業にしていきたい。

(今後)流通構造は大きく変わる。小売業がお客様のデータを速く、正確に、多く持てる時代になってきた。データを持つ者が価値を生むという時代になると考えている。(その中で)小売業がリーダーになることを目指す。データを分析するだけでなく、販売した結果を確認しながら、お客様の潜在的なニーズが掘り起こせると思っている。PDCAサイクルを繰り返すことで、お客様のニーズに近づける。それが価値を創造することになる。

EDLPは西友の生命線。「西友は(お客様から)安い」と思われている。これはウォルマートの成果と考えている。これを維持・強化していくが、「安い」だけではない。日本の消費者は品質に対するニーズが強い。食品に対しては「おいしい」「簡便」「健康」ニーズもある。他のスーパーマーケットも(こうしたニーズに)対応はしているが、価格が高い。何とか低価格でできないかと考えている。EDLPと同時に、価格以外のニーズにも低価格で対応していきたい。EDLC、生産性を上げていなければ、価格を安くして利益をあげることは実現できないと考えている。

データをもとに、速く、正確にお客様のニーズを見つけられるのが小売業。NB商品を売っているだけでは価格合戦になり、利益を出すのは難しい。メーカーと小売が販売計画、販売実績のデータを共有し、価値のある商品を生産し、効率的に物流し、販売していく。お客様に最も近く、データを有する小売業がリーダーとなって進めていくことがいいのではないか。そういう考え方で商品開発を強化していく。PBも付加価値を加えた独自商品を開発していきたい。

お客様に気持ちをお伝えし、その思いが伝わったときに(商品は)売れるものと考えている。デジタル化、ネット化、データ活用は今後進むだろうが、だからこそ「商人」という思いを持つことが非常に重要だ。基本を徹底すること、例えば(お店でお客様に)しっかりあいさつをすること、店舗を清潔に保つこと、(商品の)鮮度をよくすること、品切れをなくすこと。「お客様にできるだけ喜んでいただけるお店にしたい」という気持ちを持つこと、それが商人としての商売の原点。ここがしっかりしていないと、データの活用やネット化にもうまく対応できないと考えている。

 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)