サザコーヒーはなぜ高額で落札したコーヒーを出血大サービスするのか? 「ゲイシャまつり」に血道を上げる鈴木太郎社長の勝算

 世界で最も価値のあるコーヒーとされるパナマ・ゲイシャコーヒー。
強い甘味と強い香りが特徴で冷めてもおいしい味わいに定評があり、パナマコーヒーのオークション価格は希少性と年に一度のオークションのご祝儀相場で年々上昇している。

 そうした中で、茨城県ひたちなか市を拠点とするサザコーヒーは、21年9月のベストオブ・パナマ品評会で優勝したヌグオ農園(チリキ県)のパナマ・ゲイシャコーヒーをオークション史上最高額となる100ポンド(約46kg)2833万円で落札し、それを「ゲイシャまつり」と称したイベントで出血大サービスしている。

 1月3日まで開催されているイベントでは、同コーヒー豆を他の高級ゲイシャコーヒーとブレンドしてカップでの提供と物販(豆・ドリップバッグ)で販売している。

 価格は、採算を考えると1杯あたり1万8000円 程度だが、総じてその10分の1以下に抑えられている。つまり、売れれば売れるほど赤字が増える構造となっている。

 その勝算について、取材に応じた鈴木太郎社長は「これからの店舗運営はサービス業による信用経済だと考えている。つまり一度でも楽しいと思ってもらえたらリピートして下さる。そこに価値を見出すべく『ゲイシャまつり』などのイベントを積極的に開催している」と説明する。

 「ゲイシャまつり」を広告宣伝と位置づけてイベントに徹する考えで、この背景にはコーヒーの味だけでは差別化は難しいとの見方がある。
「たとえば、どんなにコーヒーがおいしくても、コーヒーを飲むためだけに遠方からお客様が訪れたりはしない」という。

パナマ・ゲイシャコーヒー - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
パナマ・ゲイシャコーヒー

 ゲイシャ品種はエチオピアのゲイシャ村に自生していたのが品種名の由来。
 イギリスの植物収集家によりケニアに集められた後、コスタリカ経由でパナマに渡りエチオピア産のコーヒーとして植えられ2004年にゲイシャ品種としてその味が発見された。

 ゲイシャ=芸者とよく誤解されることから、鈴木社長は認知を広めるべくこれを逆手にとり“誤解を深める会”としてイベントに芸者を招いたこともあった。

 「次のコーヒー業界のブルマンをつくらないといけない。我々がパナマゲイシャを盛り上げようと取り組んでいるせいか、ゲイシャ品種の本流であるエチオピアのマーケットも奮起されたように感じる。我々はその熱狂しているコーヒーの真ん中にいなければならない。その足跡をたどるようになってしまってはいけない」と語る。

製造時の酸素濃度を0・8%に抑えることに成功したドリップバッグコーヒー「サザカップオン」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
製造時の酸素濃度を0・8%に抑えることに成功したドリップバッグコーヒー「サザカップオン」

 「ゲイシャまつり」に血道を上げる一方、製造面では「コーヒーの香りに永遠の命を吹き込むことを目標に掲げている」とし研究と設備投資を行い、ドリップバッグコーヒー「サザカップオン」の酸素濃度を0・8%に抑えることに成功した。
 これにより賞味期限は1年から3年への延長を可能にした。

 昨年10月には新工場が稼働し焙煎生産能力を従来の約4倍に高めスーパーなどからの引き合いにも対応できるようになっている。

 コラボやスイーツにも積極的に取り組んでいる。

 茨城県大洗町が舞台のアニメ「ガールズ&パンツァー」のコラボ商品を拡充し、スイーツでは「ガールズ&パンツァー」の世界観をイメージした「マリー様のモンブランケーキ」や「世界一おいしいコーヒーゼリー」「レインボーミルクレープ」などを発売しヒットを飛ばしている。

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