新型コロナウイルス感染症の影響でビジネス街である東京・赤坂エリアの昼夜の人口は激減し、飲食店をはじめ小売店や商業ビルテナントなど業種を問わず厳しい状況が続いている。
このような環境下で、赤坂の地元飲食店・地元企業・氏神神社である赤坂氷川神社が結束した。
結束して立ち上げられた「茜共創プロジェクト」の“茜”の言葉は、赤坂という地名の由来である“アカネ草”から用いられた。
茜には、朝日の形容詞でもあることから「ここ赤坂の地に再び光が差し皆を照らし続けるように、そして、皆に元気を与えられる街になるようにとの想いを込めている」と語るのは、同プロジェクトの発起人の一人で代表理事を務めるホッピービバレッジの石渡美奈社長。
石渡社長はこれまでにも、東日本大震災で人の消えた赤坂の活性化を目指し、2012年から、はしご酒イベント「赤坂食べないと飲まナイト」を毎年開催。2000人規模を集客するイベントへと発展させ、19年に名称を「赤坂 yoi machi はしご酒」(赤ベロ)に改めて東京オリンピック開催に向けて準備を進めていたところ、新型コロナが直撃した。
コロナ収束を前提に赤坂史上最大規模の祭事の開催を目指し、その第一歩として発起人らが1年以上かけてミーティングを重ね、6月19日にオンラインイベント「茜まつり~駆け上がろう!赤坂 はじめの一歩編」を開催した。
イベントでは、参加者にクラウドファンディングのリターン(返礼品)として赤坂ならではの料理や銘菓、飲料を事前に配送し、参加者が家庭でそれらを味わいながら18時から20時までの2時間視聴できるようにした。
赤坂一ツ木通り商店街振興組合・赤坂みすじ通り会・赤坂通り商店会との共催で、港区が後援。配信などの技術面ではニッポン放送、Zoomビデオコミュニケーションズ、楽天グループが協力した。
イベント冒頭、武井雅昭港区長はビデオメッセージで「茜まつりは赤坂の地から全国に向けられたエールであると思う。皆さんと手を取り合って新型コロナを克服するため総力を挙げて取り組んでいく」とエールを送った。
各商店街からも以下のメッセージが寄せられた。
――「コロナ禍の中で地域の皆様に何とか元気を取り持っていだこうと茜祭りを企画した」(赤坂みすじ通り会・富山和信会長)
――「商店街はコロナ禍で個々のお店がなかなか動ける状態ではなく微力だが、若手の企画にぜひ参加・協力してきたい」(赤坂通り商店会・小出俊二会長)
――「皆様が安心して街に出れるようになったときには、何かできないかと今計画し始めている」(赤坂一ツ木通り商店街振興組合・隅谷彰宏理事長)
赤坂の名店もビデオで紹介。
100種類以上のおつまみが楽しめる「まるしげ」、出汁とネタにこだわったおでん20種類とおばんざい料理が楽しめる「あさり」、松茸と飛騨牛が楽しめる日本料理店「松葉屋」、麻婆豆腐をはじめとした四川料理をベースとした中華料理店「炎麻堂」――の各店の特徴と逸品を端的に描いた。
これら名店ほか、返礼品では赤坂璃宮、赤坂柿山、赤坂青野、福砂屋、陶香堂、ホッピービバレッジが協力。
終盤では、石渡社長と落語家の立川志ららさんが司会進行を務め、赤坂の未来について考えるトークショーを実施。「まるしげ」の小久保茂紀店主、陶香堂の吉岡聰一郎社長、赤坂氷川神社の恵川義孝禰宜と意見を交わした。
スペシャルゲストも登場。
ショートショート フィルムフェスティバル & アジアの代表を務め、石渡社長と親交のある俳優の別所哲也さんは「コロナ禍で世界中と国際短編映画祭を試行錯誤しながら取り組んでいるが、人間には祭が必要だとつくづく思った。祭の意味も考えることができた。世界中や映画が好きなお客様と新しいつながり方ができることも分かった」と語った。
芸者で初めて「旭日双光章 芸術文化功労」を16年に受章した赤坂芸者の育子さんは「赤坂はお祭りになると街とみんながイキイキする。今はこのような寂しい時代になったが、いつか絶対そのときは来るので一人一人が大事な一日を過ごしてほしい」と呼びかけた。
映像では、NPO法人赤坂氷川山車保存会の会長を務め赤坂氷川山車「猿」の修復などに奔走した故・石渡光一氏(ホッピービバレッジ会長)の勇姿も映し出された。
最後に今企画をバックアップした楽天の平井康文副社長は「茜祭りの一端を担えて光栄に思う。今回は前哨戦ということで、今後も楽しみにしている」と期待をよせた。