茶葉を丸ごと摂取できる抹茶の力とは? 認知機能低下の抑制を検証へ 伊藤園など3社が研究

抹茶の原料となる碾(てん)茶は、摘み取り前に日光を遮ることで旨み成分であるテアニンを多く含んでいるのが特徴。加えて、抹茶は碾茶を石臼で挽いて丸ごと食すものとなることから、抽出するお茶では摂ることのできない茶葉の食物繊維、β-カロテン、溶けずに残ったカテキンを余すことなく摂取できるのも特徴となっている。

伊藤園は2000年から、カテキンの基礎研究をベースにテアニンが脳機能に与える効果を科学的に証明する研究に取り組み、テアニンの脳神経保護作用や抹茶の継続摂取で健常な中高年者の認知機能の一部が改善することを確認した。

認知機能が低下すると物忘れだけでなく、日常生活のさまざまな場面で必要とされる注意力(注意を持続させて一つの行動を続ける力)や判断力(判断の正確さや速さ、変化する状況に応じて適切に処理する力)なども低下するため、以前は問題なくこなせていたことに手間取ったりする。

18年の研究発表では物忘れが気になる健常な中高年者62人が抹茶2gを12週間持続して摂取したところ、実行機能(物事を迅速に判断して実行する能力)や注意機能の改善が確認された。

認知症は、認知機能の低下によって日常生活に支障をきたす状態を意味し、ある日、突然発症するのではなく年単位で進行していく。

そのため健常と認知症との間に「認知症には至らず日常生活は送れているものの物忘れが目立ってきた」というグレーゾーンの時期があり、この時期を軽度認知障害(MCI)という。

MCIを放置すると認知機能が悪化する恐れがある反面、生活習慣を改めるなどして予防に取り組めばMCIから健常な状態へ回復する可能性がある。

伊藤園がこのほど発表した抹茶の一大プロジェクト「ITO EN MATCHA PROJECT」は、健常者やMCIの人を対象にしたもので、認知機能の精度を高める機能性表示食品「お~いお茶 お抹茶」を7日に新発売するほか、全国約3千500人のルートセールスによる社会貢献活動を展開していく。

研究では、自社の研究に加えて、18年から島津製作所と筑波大学発のベンチャー企業MCBIとの3社共同でMCIと主観的物忘れのある60~85歳の男女を対象にした臨床試験に取り組んでいる。

同試験は、ヒトにおける抹茶介入試験で脳内アミロイドの沈着の変化について解析する世界初の試みで、抹茶を摂取することで認知機能の低下抑制がみられるかを検証するものとなる。

機能性表示食品「お~いお茶 お抹茶」のドリンク商品(伊藤園)
機能性表示食品「お~いお茶 お抹茶」のドリンク商品(伊藤園)

「毎日、お点前一杯分に相当する抹茶を継続して飲んでもらい、6か月と12か月でデータを取得する世界初の研究となる。テアニンやカテキンのサプリではなく抹茶を対象にしているのも特徴」とMCIBの内田和彦代表は説明する。

検査は、日常生活動作の検査や睡眠の質を評価する調査にとどまらず、脳の萎縮を調べる画像撮影検査(MRI)や脳内に蓄積したアミロイドβを可視化する画像検査、血液バイオマーカー検査など多岐にわたる。

「日常生活で無理なく取り組むことが予防の非常に重要なポイント。現在8割の方が6か月を終了し研究成果は22年の発表を予定している」という。

抹茶は、茶葉を丸ごと挽いているため、茶葉の栄養素を余すことなく摂取できる点も特徴。お茶の代表的な栄養素であるカテキンやテアニンだけでなく、ビタミンCや水に溶けにくいビタミンA・E、食物繊維も丸ごと摂れる利点がある。

管理栄養士の渥美まゆ美氏は、普段の食生活での“抹茶のちょい足し”を推奨。「抹茶の旨み、ほのかな苦みが食材の中で引き立つことで、塩味や脂っこさがそれほど欲しなくなったり、満足感が得られたりする」とコメントしている。

伊藤園は「ITO EN MATCHA PROJECT」で「抹茶を食卓に」をスローガンにした抹茶を食べる食育活動も行っていく。

11月18日発表会に臨んだ伊藤園の本庄大介社長は「われわれは本気で抹茶で世界を変えられると信じている。しかしながら1社では実現できない。いまの時代は共生・共同の時代。パートナーの皆さまと高齢化社会の日本を21世紀の世界の先進モデルとして、認知症という大きな社会課題に抹茶で貢献したい」と意欲をのぞかせた。