ポッカサッポロ 事業構造を変革 レモン事業の領域拡大と植物性素材に意欲 征矢真一新社長が語る

3月27日から現職のポッカサッポロフード&ビバレッジの征矢真一社長は5月20日、オンライン上で取材に応じ、やや総花的であった飲料・レモン・スープ・大豆チルドの各事業構造を見直し、植物性素材により特化した事業構造にしていく考えを明らかにした。

「今後、サステナブルな社会の中で環境や健康への意識シフトは飛躍的に進み、植物性素材が一つのセグメントとして認知され求められる時代が来る」との考えの下、少なくとも10年先を見据えて、おいしさ・簡便・健康の面から植物性素材をキーワードに同社の強みを磨きあげていく。

征矢社長はこれらの取り組みを“未来の食のあたりまえ”の創造と呼び、「既存のもので新しいものを創ることにも取り組むが、やはりゼロから新しいものを創るのは必須。ただし、いきなり飛地にいくのではなく、持っている資産や強みから新しいものを創り上げていきたい」と意欲をのぞかせる。

その核となる植物性素材は、大豆チルド事業で展開している豆乳や豆乳ヨーグルトの領域を広げていく。

「最初は豆乳ヨーグルトの市場形成が大事だが、将来は広く牛乳と同じようなことをやりたい。今まで牛乳で満たしていたものを植物性タンパク質でも満たしていくことを進めていく」考えだ。

主力のレモン事業には引き続き最注力の構えだが、「まだまだ幅が狭く、レモンの原料をすべて生かしきって事業をフル展開できていない。加えて、レモンで培った技術を他の柑橘類に生かすこともできておらず、原料から手掛けて安全・安心を担保する取り組みもまだまだやり切れていない」などの課題を挙げる。

新型コロナウイルス感染拡大による今後の消費行動の変化については「外出自粛のフェーズから個人が工夫していくフェーズに入る。人との接触を少なくすることが重視されることは間違いない。そうした中で、どのような商品やサービスが提供できるかがポイントになってくる」とみている。

社員に向けては「リスクはチャンス」のメッセージを発信。これは社長就任前から用意していたものだが、期せずして新型コロナが蔓延したことで、そのリスクは桁違いのハイリスクとなってしまい発信をためらったが、「何かリスクが起きたときはゲームチェンジの可能性が高く、そのときに対応できる力が問われる」との考えから発信に踏み切った。

北海道出身の征矢社長は、このリスク対応力をばんえい競馬にたとえる。「最後の山(第2障害)を超えるときに備えがしっかりできている馬が勝つ。山があるほうが、いろいろなチャンスが生まれてくるという信念で経営していきたい」という。

「リスクはチャンス」に加えて、失敗を恐れない精神や過去から培った知見の伝承も社員に呼びかける。

「ポッカコーポレーション創業者・谷田利景さんの教えの一つは、ヒラメキと思いつきは違うということ。ヒラメキで一番大事なのはこの先何が起きるかの仮説があること。“未来の食のあたりまえ”の創造もストーリーがないといけない」と説明する。

財務目標は、サッポログループで発表した財務目標「2024年に売上収益事業利益率5%以上」にのっとり、24年に50億円の事業利益創出を目指していく。

征矢社長の座右の銘は「一粒の麦」。三浦綾子氏の小説「塩狩峠」に出てくる聖書の一節で「私という一粒の麦が後世に新しい麦を残し、その麦が次々と新しい実を結んで、やがて豊穣な畑になるよう頑張っていきたい」と語る。

趣味は旅行。健康法としては平日の朝は5時くらいから散歩に出かけることを日課としている。