三井製糖、大日本明治製糖(以下、DM)、日本甜菜製糖(以下、日甜)は3月25日、経営統合と資本・業務提携の協議開始で合意した。令和も続く砂糖消費の減少で工場稼働率が下がり再び追い込まれる前に先手を打った格好だ。また、白糖は国産糖の保護財源を製糖企業が負担して売価に反映させる「糖価調整制度」の下で流通しているが、こちらも消費減による歪みが露呈し始めている。今回の経営統合(および提携)は市場の縮小対策だけでなく、中長期的な製糖経営と砂糖制度の継続性をも考慮した“最善手”を求めた結果かもしれない。狙う効果や背景などを探る。
製糖企業の悩みは大きく2つある。
①砂糖消費の減少による工場稼働率の低下
②代替甘味料にシェアを奪われている
こと。①と②はリンクしており、競合品の拡大により砂糖消費は減少し、工場稼働率が低下した。ただ、砂糖側からすると単なるシェア争いの話では収まらなくなる。白糖には国産糖(北海道のビート、沖縄・鹿児島のさとうきび)の保護財源が毎年約500億円(調整金)転嫁されて販売されている。競合品(異性化糖、加糖調製品)は砂糖に比較すると負担が軽い。もしくはない(高甘味度甘味料)。一昨年のTPP11の交渉過程でこれら格差が是正されるかと期待されたが、一歩進んだものの期待した幅ではなかった。こうした問題が令和に入っても改善される気配がなく、砂糖の消費量だけが減り続けている。
今回、三井製糖とDMは来年4月での経営統合を目指すことになった。前述のように白糖の販売・生産環境が好転しない中で両社の統合は効果的だ。
三井製糖の19年3月期連結売上高1千53億円のうち、砂糖事業は約841億円で、DMは単体売上げ334億円のうち、非公表だが推定300億円以上は砂糖事業と思われる。両社合わせて1千100億円以上の砂糖事業はスケールメリットを発揮できる十分な規模だ。もちろん即時の生産集約の話題は現在出てきていない。今は装置産業として多数の老朽設備の更新時期を控えながら、それぞれ同じように稼働率低下に悩みながら生産している。しかし、いつでも準備が整えば、この切り札を使えるということは大きな保険であり強みだ。また、このところ毎年のように日本列島を襲う大規模災害による被害や、万が一の生産設備の故障などに対しても、共同工場も含めて全国をカバーする6工場の生産ネットワークは、顧客に対する安定供給の点からも抜群の安定感・安心感となる。
このことは海外展開に注力している三井製糖にとっても安心材料になる。今年の新年会で雑賀社長は「日本国内の販売と生産基盤がしっかりしていることが海外挑戦の前提である」とあいさつ。この時に統合話がどれだけ進んでいたかは不明だが、言葉通りの“前提”を手に入れた。国内シェア№1の三井製糖からすれば、“世界の三井製糖”が目指すポジションであるだろうし、相応しい事業規模や機能、設備、商品が必要となる。中国での砂糖事業も資本提携から家庭用商品の生産・販売にまでコマを進めており、いずれ中国市場で“スプーン印”の現地生産品が並ぶことになれば“世界の三井製糖”に一歩近づくことになる。国内と世界の事業を両輪として進むために今回の統合話はむしろ必須条件に見えるほどだ。
(後編へ続く)