國分勘兵衛 平成を語る〈8〉 人口構造・国民意識の変化

平成23年〈2011〉以降、日本は本格的な人口減少時代に突入している。少子高齢化の進行により、夫婦と子供2人で構成される標準世帯の概念は形骸化。国民の意識と生活様式は急速に多様化している。平成期の経済・社会政策の結果として所得・地域・世代間の格差も広がった。さらに平成27年〈2015〉には平成以降に成人を迎えた世代が総人口の過半数を占めるに至り、経済成長を知らない彼らインターネットネイティブの価値観がマジョリティになりつつある。一方、消費財サプライチェーンは旧来のマスプロダクト/マスディストリビューション/マスマーケティング志向から脱却できず、急速な社会構造変化に追いつけない状況にある。

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――日本の総人口が減少に転じてから既に7年以上が経過しています。それに伴う国内消費の縮小に加え、平成25年(2013)頃からは人手不足によるコストアップが加速しています。食品業界がこの難局を乗り切るには、何が必要でしょうか。

「生産性を上げても吸収しきれないコストについては、転嫁せざるを得ません。しかし、それよりもまず、量から質の方向にビジネスの発想を切り換えていくべきでしょう。マーケットが縮んでコストが恒常的に上がっているわけですから、付加価値を高めていくより他に存続の道はありません。高齢者が食べやすいように加工度を上げるなど、多様化する生活者のニーズにキメ細かく応え続けることで、現代の社会構造に合った業界が形成されていくのではないでしょうか。

――以前、キッコーマンの密封容器入りの醤油を高く評価されていましたね」

「ええ。あのような形で使い勝手を高めるのも有効でしょう。現に醤油のユニットプライスは見違えるほど変わりました。家庭で無駄が出ないので、量はそれほど売れなくなりますが」

――かつての大量生産・大量販売モデルは家庭での無駄に支えられていたという見方もあります。

「残念ながら否定できません。しかし、食品を無駄なく使う消費生活が浸透すれば、業界の意識や商売の仕方も変わるはずです。そういう意味でも、今の食品ロス削減の気運をさらに盛り上げていくべきでしょう」

――量から質への転換の中で、卸にはどんなことが求められますか。

「最近は少品種大量販売のコモディティの領域もだいぶ細分化されてきました。多様化と質の追求の中で、流通業務はますます複雑で難しいものになるでしょう。それを引き受け、サプライチェーンの効率を支えていくのが、私たち卸の機能であり、役割です。今後は商品を仕入れて売るという卸売の基本動作を超える仕事も増えてくるでしょう。その中で私たちが得る対価も従来型の売買差益から機能フィー、手数料のような形に変わっていくのではないでしょうか」

――国分グループは平成期に急速に小口化した酒販店に対しても供給を継続しました。ここ数年は同業大手が消極的な介護給食事業者への小口配送にも力を入れていますね。今後の消費変化の中で御社のように小商いを諦めずに続けていく姿勢は大切だと思います。

「そこは様々です。わが社のようなアプローチもあり、ご同業のように得意先を大手チェーンに集約するのも一つの生き方です。ただ、小口で難しいとされる商いも、ずっと利益が出ないわけではありません。長く続けることでノウハウが蓄積され、だんだんと形になってくるものです。方向さえ間違っていなければ、時間が解決してくれる部分もある。改めて振り返ってみると、平成期のわが社の歩み自体がそんな感じです」

(次号に続く)