菊水は、新経営体制の下、商品力の強化と生産体制の再構築を進める。6月に就任した池田賢治社長は、米久と伊藤ハム米久ホールディングスを主に、国内外の工場運営に携わってきた。人手不足やコスト上昇、季節変動への対応を踏まえ、生産効率の向上を経営課題に位置付けるとともに、冷凍調理麺を成長分野と捉え、供給能力の整備を急ぐ。3年後の80周年、さらに100周年を見据え、「信頼と創造」を軸とした事業基盤強化を図る。
今年4~7月のチルド麺市場は前年比92.4%と厳しい環境となった。7月の低温により冷やし中華など夏物が苦戦した。一方、菊水は麺全体で99.4%と前年をわずかに下回ったものの、市場を7ポイント上回った。主力商品で簡便性や汎用性の高い、スープなし玉ラーメン群が114.6%と伸長し、全体を下支えした。従来の「札幌」訴求にとどまらない商品群が伸長している。
販売先ではチルド麺売場に加え、デリカ、精肉、鍋物セットなどへの提案を強化する。既存の麺売場でシェアを奪い合うだけでなく、新たな売場・利用機会を開拓することで、市場の裾野を広げる。
成長分野として位置付ける冷凍調理麺では、供給能力の確保に取り組む。スーパーのバックヤードで解凍して販売することで、ロスや値引きを抑制できるほか、保存料を抑えた品質設計も可能となる。一定の需要が見込まれる一方、現状では生産能力の制約から販売先を限定。9月末でコンビニ向けベンダー事業を終了し、今後は冷凍調理麺へ注力する。
生産体制では、隣接する工場の売却に伴い、拠点再編が急務となっている。新工場建設や既存ラインの増設に加え、協力工場・委託生産の活用も含めて検討する。全国展開するチルド麺メーカーとして、販売先に近い場所で生産することによる物流効率と、自社工場拡大に伴う固定費増加の双方を勘案して、内製と外部活用の最適なバランスを見極める。
また生産畑を歩んできた池田社長が重視するのが、設備投資だけに頼らない現場改善だ。チルド麺製造は季節変動が大きく、需要ピークに合わせた人員・設備を抱えることが閑散期の負担につながる。このため、冷凍技術を活用した計画生産によって生産量を平準化するとともに、自動化・省人化による人手不足への対応を進める。さらに、労災、ヒューマンエラーの低減も視野に、作業動線や工程の見直しなど、投資を伴わない改善にも取り組む。
経営の基本に据えるのは、社是「信頼と創造」。品質、納期、約束を守ることによって築いてきた。信頼を維持する一方、市場環境や消費者ニーズの変化には、新製法や新商品開発など創造で対応する。生産、商品、販売を個別に捉えるのではなく、全体最適の視点から事業構造を見直す。
80周年、その先の100周年に向け、菊水が目指すのは、既存事業を守るだけの経営ではない。品質とブランドという基盤を維持しながら、生産効率を高め、商品・販路を広げることで持続的な成長につなげる。生産現場を知る池田社長の下、環境変化に対応できる企業体質への転換を進める。
【池田社長の略歴】1967年10月静岡県沼津市生まれ。90年3月北里大学理学部卒業、同年米久㈱入社・本社加工工場配属。2024年伊藤ハム米久ホールディングス㈱転籍。この間、開発部や生産管理部、国内工場やアメリカ、中国等の海外駐在で工場運営に携わる。26年に㈱菊水へ転籍、6月より現職。趣味はランニング。
