農水畜産業野菜「野菜の日」(8月31日)...

「野菜の日」(8月31日)座談会 カゴメ、ロック・フィールド、サラダクラブ 野菜摂取へ三者三様のアプローチ

 全国青果物商業協同組合連合会など野菜関連団体は、1983年(昭和58年)に8月31日を「野菜の日」として制定。これを契機にさまざまな団体や関連企業が、全国各地で野菜の啓発活動を行っている。野菜のことをもっと知り、食べてほしいとの願いから8月31日を8(や)3(さ)1(い)のゴロ合わせで「野菜の日」を設定。各種イベントや広報活動を通して、野菜の魅力や野菜に関する正しい知識、食生活の改善につながることなどを伝えようといる。そこで食品新聞では、カゴメの鶴田秀朗マーケティング本部ブランドコミュニケーション部野菜価値共創グループ部長、ロック・フィールドの三好勝寛取締役企画開発本部本部長、サラダクラブの 新谷昭人代表取締役社長の3氏により座談会を開催。野菜飲料(カゴメ)、惣菜・サラダ(ロック・フィールド)、パッケージサラダ(サラダクラブ)の3分野による異なった立場から、野菜事業にどう向き合い、需要開拓に向けてどのようなアプローチをしているかなどを聞いた。

鶴田氏 「野菜摂取推進プロジェクト」を展開
三好氏 サラダには食卓の「彩り」による魅力も
新谷氏 「withベジタブル」戦略でサラダの喫食機会を増やす

新谷昭人氏
新谷昭人氏

  …需要拡大の取り組みについて

鶴田氏 2020年1月から、「野菜をとろう 350g」をスローガンに野菜摂取推進活動を展開している。この趣旨に賛同する企業・団体21社とともに「野菜摂取推進プロジェクト」を推進している。賛同企業とはこれまでに235件の企画を展開し、累計約1億9,000万人に野菜摂取の重要性や野菜の魅力を伝えてきた。また、野菜摂取量を推定できる機器「ベジチェック」で野菜不足を自覚していただくとともに、健康セミナーで野菜の上手な摂り方をお伝えしている。「ベジチェック」の測定回数はのべ2,400万回以上、健康セミナーの受講者数は44,800名以上にのぼる(2026年5月時点)。

 情報発信による啓発活動に加え、商品を通じた野菜摂取機会の提供にも注力している。トマトジュースは、ここ4年、毎年過去最高の出荷量を更新。背景には、機能性表示食品として、血中善玉コレステロールを増やす機能と、血圧が高めの人の血圧を下げる機能という2つのヘルスクレームを商品に表示したことで、ヘビーユーザーが増えた。野菜・果実飲料「野菜生活100」は、この春、野菜の配合量を70%から88%へ引き上げ、手軽においしく野菜を摂れる価値をさらに強化した。生鮮野菜では「高リコピントマト」や「高GABAトマト」など栄養訴求型商品に注力。またブロッコリーに含まれる栄養素「スルフォラファン」に着目し、機能性表示食品「スルフォラファンブロッコリー」を首都圏中心に発売している。

三好氏 野菜には健康や栄養の魅力もあるが、食卓を明るくする「彩り」の魅力もある。サラダをショーケースに並べて販売しているが、一目見ておいしそうだとかきれいだと思っていただくことを意識している。工場から出荷するときには野菜や具材、トッピング、ドレッシングとパーツに分けて出荷し、店頭で盛り付けることで、できたての鮮度感で提供できることが強みの一つ。また、異なる野菜の組み合わせや素材と素材の組み合わせ、さらに焼いたりスチームをかけたり、ピクルスにしたりと、調理法によっても味わいが変わり、素材×調理法により、おいしさに無限の可能性が拡がる。野菜を摂るための組み合わせを工夫しながら、野菜の魅力を引き出すことをミッションに掲げている。例えば、昔ながらのポテトサラダにはボイルした野菜が少し混ざっているものが多かったが、逆発想により生野菜を食べるためのポテトサラダを提案した。また、お客様のニーズや市場環境が変わる中で、現在は個食に対応した一食完結型のニーズが増えてきた。

新谷氏 需要拡大の取り組みには3つある。1つ目は、キユーピーグループと連動した取組みである「サラダファースト」。私たちは、サラダのことを「一番大切」に考えるグループとして、食卓のサラダ出現頻度を高め、サラダ領域を広げることでサラダの喫食機会を増やすことを目指している。具体的には、好きなものと一緒にサラダを食べる「withベジタブル」戦略を推進中。2つ目は、生野菜だけでは1日350gは難しい。ブロッコリーは栄養価が高いが、茹でるのが面倒と敬遠されがちで、思ったほど食べられていない。関東エリアでテスト的に発売をしているが、冷凍野菜と違うコリコリした食感や、消費期限が4日以上持つなどの価値を訴求すれば、もっと野菜摂取は増える。3つ目は、食べる機会を増やすということ。朝食の喫食率が低下する中、全世代の10%弱ぐらいの人が朝食を食べていない。そこでジャムやヨーグルト、サラダ、野菜ジュースなどと連動し、朝食の喫食機会を増やすことも必要だ。また、ハレの日の取組みとして、クリスマスでのリースサラダや、母の日のブーケサラダなど特別な日のサラダ提案など、各々の記念日や誕生日、パーティーなどの機会に、食卓を華やかにするような提案を実施。義務感ではなく、サラダを食べる楽しさを提供することで、若年層やシニア層など幅広い世代に需要拡大を図っていきたい。

鶴田氏 収穫まで生産者と並走
三好氏 植物工場を有効活用
新谷氏 日本の農家を応援

三好勝寛氏
三好勝寛氏

…気候変動との向き合い方

鶴田氏 国内では、気候変動への対応の一環として、夏季でも比較的冷涼な北海道で加工用トマトの産地拡大を進めている。北海道の産地は本州に比べて大規模であることから、機械収穫の導入を積極的に進め、生産者の作業負担軽減と収穫効率の向上に取り組んでいる。北海道で収穫したトマトは搾汁のため栃木県那須塩原市の自社工場まで長距離輸送していたが、品質悪化による廃棄の削減や環境負荷の低減を図るため、北海道千歳市に新たな加工拠点を建設している。2028年夏の稼働開始を予定している。海外では、加工用トマトの世界的な産地である米国カリフォルニア州に農業研究拠点を設置し、高温耐性や耐病性に優れたトマト品種の開発や栽培技術の研究を進めている。さらに、研究開発のスピードを加速するため、コーポレートベンチャーキャピタルファンドを設立し、最先端の農業技術を有する国内外のスタートアップへの投資やオープンイノベーションを推進している。

三好氏 葉物野菜などは、新たな産地の開拓・拡大に取り組んでいる。近年の夏場は葉野菜の状態が良くない。レタスの歩留まりは夏場になると40%を切ることもある。これは工場の生産稼働にも影響を及ぼす。そこで、数年前から「植物工場の野菜をいかに有効活用できるか」という取り組みを進めている。以前は価格が合わないことが課題だったが、植物工場野菜の「歩留まりの良さ」を考慮すれば、金額的には十分ペイできると判断した。夏場は、植物工場の野菜がなければ太刀打ちできないのが実情であり、使える野菜の種類を広げていく方針だ。

 もう一つの課題は、契約農家から調達する野菜の比率をいかに上げていくか。当社では年間で180アイテムもの野菜を使用しているため、そのすべてを契約産地から賄うのは難しい。全体としては重量比で6割ほどが契約産地からの調達だが、使用量によって比率は異なる。これをいかに全体的に高めていけるかが鍵となる。また、パプリカやセロリなどは海外産に頼っている部分も大きい。これらをいかに国産化していくか、数年間のスパンで国産化を推進していく計画だ。

新谷氏 当社は国産を中心にラインアップしているので、異常気象による野菜調達の不安定さは経営課題に直結する。一昨年のキャベツ相場高騰の際は、本当に大変な思いをした。なぜそのようになってしまったかというと、我々のパッケージサラダは創業時から、相場が上がろうが下がろうがずっと同じ価格で販売してきたからだ。昨年3月には創業初となる相場に応じた値上げを実施した。この時、実際に生産者と会話を重ねることで、絆がより強くなり、苦境を乗り切れた。今はもう、野菜が当たり前に栽培できるという時代ではなくなったのだと、真剣に考えなければいけない。そのことを、生産者とのコミュニケーションを通じて痛感している。

 いかに生産者と綿密な情報共有をするかが最重要課題だ。契約栽培を進める上では、それと同時に、需要と供給のバランスをどうやってコントロールしていくかということも必要だ。野菜がとれすぎてしまう時期は、店頭で増量企画を実施することで、畑での圃場廃棄をなくす取り組みも進めている。もう1つは、不作時でも持続的に供給できる体制作りだ。必要に応じて、ダイナミックプライシングの導入も準備している。

…生産者との取組みについて。

鶴田氏 国内の加工用トマト生産者とは、創業以来、一貫して契約栽培を行っている。栽培面積と買い取り価格をあらかじめ定め、収穫したトマトはすべて当社が買い取る仕組みで、生産者の安定経営と当社の安定調達を両立している。
また、「フィールドパーソン」と呼ばれる専門スタッフが各産地を担当し、定期的に圃場を訪問して栽培指導や品質管理を行うとともに、生産者との対話を通じて、知見を蓄積している。収穫まで伴走しながら築く信頼関係は、当社の大きな強みである。さらに、年に一度、生産者表彰や優良事例の共有の場を設け、生産者との連携強化を図っている。
生産者とともに育てたトマトを使用し、「カゴメトマトジュースプレミアム」を毎年製造している。商品パッケージや販促物で生産者を紹介することで、原料の安心・安全を発信しており、好評を得ている。

三好氏 当社では「環境負荷低減に取り組む生産者を応援する」というスタンスをとっている。減農薬や低化学肥料に取り組む生産者への応援を、商品にも訴求している。静岡に工場があるため、近隣の生産者とのつながりを強めることで、輸送時のCO2削減も同時に実現できるような供給網の構築を目指している。

 もう1つは、私たちが「サステナブルフードシステム」と呼んでいる、生産者の皆さんと当社の惣菜の購入者をつなぐ取り組みだ。具体的な事例として、熊本に「赤茄子(ヒゴムラサキ)」という品種がある。地元では普通に焼き茄子として食べられているが、魅力ある野菜として認識されてなく、栽培も難しいために徐々に作られなくなっていた。そこでこの茄子を「サラダで食べられる」と提案し、生産者とタッグを組んで惣菜化した。このように、これまで脚光を浴びてこなかった野菜を取り上げることで、産地が盛り上がり、野菜の価値も上がる。サラダを食べたお客様の反応を産地へフィードバックすることは生産者の励みにもなるし、売上が伸びれば生産者の収入も増える。

新谷氏 当社が大切にしている「3つの柱」がある。1つ目は「日本の農家を応援する」こと。2つ目は「野菜を食べて健康になってもらう」こと。そして3つ目は「地球環境にやさしい会社をめざす」ことだ。最初に「農家を応援する」ことを掲げているのは、生産者の皆さんは、私たちの未来をともに作るパートナーだからだ。そのため、契約産地からの調達は「全量買い取り」を基本とし、農家の経営安定に貢献することを第一に取り組んでいる。物量がない厳しいときこそ、当社も協力しなければならない。逆に供給過多の際には「増量企画」をしっかりと実施する。なぜここまでやるのかというと、私自身が生産者と会話を重ねる中で「企業側としてやれることがたくさんある」と気づかされたから。それが分かり始めてから、生産者のことを一番に考えた施策を打つようになった。

 28年度までに産地リレーが出来ていない彩り野菜6品(パプリカ、トレビス、ラディッシュ、ビーツ、かぼちゃ、紅心大根)の100%国産化に向けた取組を進めている。少しでも国産の良さをお届けする意志を示すことで日本の生産者にもっと元気になってもらいたい。また、当社でも「グロワー・オブ・サラダクラブ」という産地表彰制度を設けている。受け入れ時に品質を審査し、その評点をもとにブロック別で最優秀産地、優秀産地を選出して表彰する仕組みだ。表彰式では契約農家の皆さんとお互いをたたえ合いながらコミュニケーションを図っている。最優秀産地には私自身も直接お伺いし、「来年はもっと多くの物量を契約します」というコミットメントをしながら、持続可能な農業をサポートしている。

鶴田氏 世代別アプローチで需要開拓
三好氏 ファンとの接点づくりに挑戦
新谷氏 パッケージサラダの価値向上へ

鶴田秀朗氏
鶴田秀朗氏

…各社の課題と今後の取り組みについて

鶴田氏 野菜を食べ続けるための動機を一人ひとりに根付かせられるかが課題。

 子どもの場合は、野菜を「育てる」「収穫する」「調理する」等の体験を通じ、苦手だった野菜が食べられるようになるケースが多い。過去のイベントでも嫌いだったトマトを食べるお子さまの姿を見て、お母さまが感動する様子を何度も見てきた。

 一方、大人にとっては健康への関心が大きな動機となる。特に血圧を気にする人は多く、日本で高血圧とされる人は約4,300万人に達し、国民の3人に1人。そこで野菜摂取推進プロジェクトでは「ナトカリ」の考え方を推奨している。減塩は重要だが、塩分を控えるだけでは食事のおいしさに影響が出て、継続が難しい方もいる。そのため、塩分を減らすだけでなく、カリウムを積極的に摂ることも大切だ。カリウムには体内の余分なナトリウムの排出を促す働きが期待されており、野菜や果物はその代表的な供給源である。「ナトカリ」は、大人が野菜を意識するきっかけになり得ると考えており、今後も発信を強化していく。

 アプローチが難しいのは若年層。当プロジェクトが主催する「20代の野菜不足解消アイデアコンテスト」でも、若年層が将来の健康のために野菜を摂取する意識はまだ低いと感じた。健康以外の明確な動機が必要だ。例えば、体づくりのために、たんぱく質を積極的に摂る人が増えているが、筋肉を効率よくつくるためには、たんぱく質だけでなく、ビタミンB6や亜鉛などの栄養素も欠かせない。そのため、野菜や果物を含め、多様な食品をバランスよく摂ることが重要となる。体づくりという関心事も、若い世代に野菜摂取を促す有効な動機の一つになると考えている。

三好氏 当社は百貨店や駅ビルを中心に惣菜店を展開しているが、限られたお客様にしかアプローチできてないことを課題に感じている。今までとは違うお客様にも提案できるように、新しい立地での出店に力を入れていきたい。

 「神戸コロッケ」ブランドでは、このほどJR東日本の3駅で催事出店。工場から油調済みコロッケを直送して販売する新たなビジネスモデルにより、今までにない、小スペース立地での出店ができ、多くのお客様に喜んでいただけた。3月にはグランフロント大阪で新食感のコロッケ「ふわもちコロ」の体験イベントを開催した。本商品の開発背景には、長きにわたってお付き合いをしてきた北海道北見の生産者が、外来害虫の影響で「男爵」の栽培が難しくなり、新品種の「ゆめいころ」へ切り替えるとの決断がある。その取り組みを全面的に応援するため、新品種ならではの食感や味わいを伝えたいと考えた。

 昨年立ち上げた新ブランド「Umi&Yama Kitchen(海と山 キッチン)」は、「食を通じて日本を旅する」をコンセプトに、日本の海と山、そして風土や風習が生み出した豊かな食を、サラダを通してお届けするブランド。当社との接点が少ない20~30代へのアプローチを意識した。肉や魚などのメイン具材に、旬の野菜やもち玄米などを組み合わせ、一杯で満足できるお弁当のようなサラダを提供。7~8月には東京・GINZA SIXで初のポップアップを出店した。

 新谷氏 当社は野菜の加工品を主力にしているが、パッケージサラダを1週間に1回以上利用される方は約4割で、それ以外の6割の方に喫食してもらうことが課題。

 今後はサラダクラブのブランディングに力を入れる。そのためには社会性を高めることが重要。現状、環境対策の点では未利用部分を堆肥化し、その堆肥を使って育てた畑の野菜を仕入れて商品化する仕組みができている。

 一歩先の取り組みとして、製品の価値を上げるアップサイクルのような領域に踏み込む必要があるのではないか。新たな食べ方の提案などを通じ、野菜の魅力を丸ごと楽しんでもらえる形が理想。特に足元では包材・資材などのコスト上昇が加速している。社会的な視点でパッケージサラダの価値をこれまで以上に高め、お客様に手に取っていただけるようにしたい。

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