主食用米の高騰に引っ張られるように加工用米も高騰し米菓業界の利益を圧迫している。
全国米菓工業組合の星野一郎理事長(越後製菓会長)は、5月20日に開催された通常総代会で「資材費・人件費・物流費の高騰が続き、特に米価高騰はまさに断崖絶壁で耐え忍んでいる企業に追い討ちをかけている」と訴える。
主食用米の価格引き下げへと備蓄米が放出される中、令和7年産(2025年産)見込みの国産米で青田買いが起こっていることを懸念材料に挙げる。
「令和7年産を青田買いとして大手の卸が抑えているという情報を我が社(越後製菓)の社員から聞いている。昨年まで1俵1万6000円~1万8000万円だった新潟県産米が、3万円で農家の膝元に買いに来られるということは過去に経験がなく、当組合としても忸怩たる思いがある」と語る。
特に不安視するのは、あられ・おかきのもち米製品の安定供給。主食用米の原料となる、うるち米が高値で取引きされることで、作付け段階でもち米からうるち米へのシフトが進んでいるという。

「これだけ主食用米が高騰してしまうと、(もち米から)うるち米への転換も致し方ない側面がある。もち米の産地の1つである岩手県からは“加工用のもち米をやらない”という寂しい話を聞いている。手遅れにならないように、生産体制の強化を訴え産地との絆を固いものにすべく危機感を持って対応しているところ」と危機感を示す。
総会後懇親会の来賓挨拶で、加工用米全般について「事前契約や複数年契約などを通じて、産地との結びつきを一層深めていただきたい」と呼びかけるのは、農林水産大臣政務官の庄子賢一氏。
「加工原材料米については現在MA米の販売を進めているが、供給が不足する際には昨年同様の対応を行っていきたい」と続ける。
続いて来賓挨拶した木徳神糧の平山惇名誉会長はコメ高騰によるコメ離れ、国産米離れの恐れを指摘する。
「一番怖いのは、米飯の食事からパンや麺にシフトしまうこと。輸入米については、大手量販店さまなどどこの業界も抵抗がなくなってきている。国産米を少しでも安くしていただき、日本中の人が食べられるようにしていただきたい。我々だけでは到底できることではなく、皆さんのお米を守ろうという気持ちが一番大事」と平山名誉会長は呼びかける。
コメ高騰は次世代ユーザーの育成にも影を落とす。
全国米菓工業組合の遠藤純民副理事長(ぼんち社長)は、農林水産省の来賓らに向けて「米菓を若い子どもたちにも食べていただきたいが、我々の努力だけでは(手頃な価格では)供給できない。米菓業界にも温かい目を向けていただきたい」と訴える。
なお、同組合約270社の約8割が国産米100%のうるち米・もち米を使用しているという。
