キーコーヒーは「トアルコ トラジャ」の生産地でキーコーヒー直営農園があるインドネシア・スラウェシ島のトラジャ地域での知見を生かし、小規模生産者の生産に引き続き力を入れる。
3月4日、都内で開催された「第11回クレドール会」で柴田裕社長は、来期(3月期)活動テーマに「持続可能なコーヒー生産の実現や、日本独自の喫茶文化を未来へ」を掲げ、「当社は約50年にわたりインドネシア・トラジャ事業で産地を支援してきた。そこで得た知恵と経験を、その他のコーヒー生産国でも生かしていきたい」と語る。
同社は昨年4月、「令和6年度気候変動に脆弱な小規模コーヒー生産者の明るい未来提案業務」を環境省から受託。
同業務は調査と提案から成る。調査は、エチオピアコーヒー生産量の7割を占めるエチオピア最大のコーヒー生産地・オロミア州で実施された。
昨年9月、オロミア州南西部最大の都市・ジマを訪れ、生産組合にインタビューを実施したコーヒーの未来部兼マーケティング本部R&Dグループ設計第二チームリーダーの有永直子氏は「現地の生産者や精選所の声から、気温の変化や降雨パターンの変化によって、生産量の減少や精選品質の低下、病害虫の発生、栽培適地の変化という影響が確認できた」と説明する。
気候変動への適応策として、同社は特に精選品質の改善に着目し、昨年11月21日にはジマ農業研究センターで営農セミナーを実施した。
セミナーでは、エチオピアの気候変動の実情を説明し、木製ハンドパルパーによる精選の提案を行った。
コーヒーの未来部兼マーケティング本部開発研究所長の藤井宏和氏は「天候不順、雨の対策として、乾燥時間を短くすることができる木製ハンドパルパーを紹介した。木製ハンドパルパーは現地で作ることができ、電気も使わず、小型のため持ち運びしやすい。参加者からは、“ぜひ自分で作ってみたい”“設計図が欲しい”といい反応を得られた」との手応えを得る。
樹齢の高い木ほど、天候不順によって開花時期がばらつきやすいと言われていることから、影響を緩和するための新植の重要性と手法も解説した。「エチオピアは基本的に乾燥した地域のため、若い苗を乾燥から守る方法を中心に、ジマ農業研究センターの研究者であるケリファ氏から説明が行われた。近隣生産者のモデル園での栽培の視察も実施し、一部の生産者からは苗の提供を行ってほしいという具体的な申し出もあった」と説明する。
今後の課題には、精選方法の指導や器具の普及、苗のサプライチェーンの強化を挙げる。
エチオピアでの受託業務は25年3月までの期限が定められているが、今後も同社の知見を生かし小規模生産者の支援を行っていく。
なお、クレドール会では来期経営体制も発表。新任執行役員に、執行役員経営企画部長に福田厚氏、執行役員管理本部長兼総務人事部長に河合啓輔氏、執行役員事業本部長に柳雅人氏、執行役員流通営業本部長に前田重敏氏が選任された。
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