輸出額が14年ぶりに前年割れとなった昨年の日本酒。一方で高価格帯の商品は堅調さを示し、プレミアムな日本酒のトレンドが世界的に続いている。日本酒造組合中央会では、絶好調のインバウンド需要獲得と海外の日本食レストランへのアプローチを強化。「日本酒」ブランドの価値向上に力を入れる。
23年の日本酒輸出額は前年比87%(410億8千万円)。数量では81%(2万9千㎘)となった。
中央会の宇都宮仁理事は8日の会見で「金額の大きい中国、米国の減少が響いた。また東南アジアも前年に大きく伸びたことから、現地在庫の滞留により昨年の輸出は減少した」と説明した。
昨年は22年に急増した各国での在庫消化が進まなかったことに加え人手不足や物流費上昇、インフレなどが影響。中国による日本産水産物の輸入停止から高級日本食レストランが苦戦したことも打撃だ。また海外展示会への出展などのプロモーションも、円安による出展料や諸費用高騰の影響を受けたという。
そのうえで、宇都宮氏は「1ℓ当たりの金額をみると、1千407円と前年から84円のアップ。昔は600円台くらいだった。フランス産ワインなどと同じように、日本酒も高いものが海外で売れるようになってきた。中国、香港、シンガポールは2千円を超えている」として、プレミアム日本酒が世界の市場をけん引しているとの見方を示した。
中国、米国、香港で輸出金額の約7割を占めていることから、今後は輸出先の多様化が課題。東南アジアに加え、日本食レストランが急増する中南米もターゲットとして注目する。
また昨年の訪日外国人旅行客は、円安を追い風にコロナ前の8割にまで回復。インバウンド消費は過去最高の5兆円に達した。中央会が各地の国際空港の売店などで展開する國酒キャンペーンの売上も好調に推移。今後は地域の酒蔵ツーリズムを含めたインバウンド消費拡大との相乗効果により、輸出促進を図る。
さらに国際ソムリエ協会とのパートナーシップに基づく若手ソムリエ教育プログラムに参加。各国で日本酒セミナーを開催するなどブランド確立と正しい理解の普及に努める考えだ。