チルド麺メーカー・菊水(北海道江別市)の社長に、6月付で春名公喜氏が就任した。伊藤ハム米久ホールディングスの経験を活かして、事業戦略の変革に取り組む。同社の事業、販売動向、今後の課題について聞いた。
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――直近の事業環境と業績を教えてください。
春名 市場の規模感はそれほど変わっていないが、一昨年の秋以降、急激なコストプッシュインフレの影響で生産者にとって厳しい環境を迎えている。当社は昨年と今年の春に価格改定を実施して、前年度は売上を確保できたが、数量は市場並みに落ちた。また販売の約9割が家庭用商品なので、行動制限の緩和などによる外食が復活した影響を受けて、ますます数量確保が難しい状況だ。
単価が上がった商品は店頭の回転率が落ち、利益確保が厳しくなっている。食数をいかに回復させるかは当社と得意先の共通の課題であり、当社が前年度を上回ることにより結果的に得意先の売上に貢献できると考えている。
――好調だった商品とその要因。
春名 焼きそばは前年度に2割程度増え、上半期も1割増。うどんは前年度に5%増、今年度も伸びている。これらが売れている要因に経済性もあるが、ラーメンやそばと比べてメニューバリエーションが広い利点がある。比較的好調だったのは「玉ラーメン」と言われる3食、4食入りの中華麺。2食入りスープ付ラーメンより割安感があり、家族でスープの好みが違ってもそれぞれの嗜好に対応できる。カテゴリーシェア21~22%と日本一の販売量。本場の札幌ラーメンであり、なおかつ3段熟成麺の品質の良さも支持されている理由だと捉えている。
上半期に関しては、7~9月に冷やし中華やざるラーメンが圧倒的な数字を残し、売上だけでなく数量的にも過去最高を記録した。チルド麺は季節変動が大きく、そこに合わせた生産キャパを持たないといけないが、早くから計画生産で準備していたため供給できた。
焼きそばやうどんなど成長分野は今後伸長の余地がある。ただチルド麺市場全体を見ると、4割強がラーメンであり、うどんと焼きそばは各2割、そばが1割、残りはパスタ。ラーメンの売上が大きいので、結局はここが伸びないと売上は上がらない。
――課題はありますか。
春名 一つはチルド麺売場に事業の大半を依存していること。市場の良し悪しで事業全体が大きく影響を受ける。二つ目は季節変動による影響。季節労働の人材確保が難しく、生産の平準化が必要になってくる。三つ目は北海道のシェアが4割前後あるので、将来的に北海道の人口減、労働人口減の影響を受けやすい。これらを解決するためには、輸出を増やしていくことが中長期的なミッションだと考えている。
――人材不足の対策は。
春名 麺のロングライフ化や、賞味期限が長い寒干しラーメンの需要を増やすことが、計画生産と平準化につながり、人手不足を解消するためのキーになってくる。寒干しは実は熱をかけずに乾燥させているため、品質的には生ラーメンに分類される。グルテンが壊れないので生ラーメン以上にコシが強い。その価値観を上手く伝えて、消費を伸ばしていきたい。