甘みの改良重ねる「サクレ」 成長止めず次なる価値を模索 フタバ食品

ロングセラーの「サクレ」「ダンディー」を筆頭に、様々なアイスを展開するフタバ食品では、時代とともに変化する価値観に合わせた小さな改良を積み重ねることで、ブランドを絶えず進化させ続けてきた。「人口が減っていくなか、今までと同じような競争ではいけない」と語る企画部の小野泰司部長に、これからの時代を見据えた商品戦略について聞いた。

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――今期(23年8月期)を振り返っていかがでしたか。

小野 おかげさまで主力の「サクレ」「ダンディー」は金額・物量とも上回るなど好調に推移している。7-8月も含め年間通して「サクレ」シリーズの安定した人気に支えられた。昨年の猛暑の経験も踏まえ、同シリーズの生産体制は2割増しで準備した。8月も順調にいけば、前年比10%前後増を見込んでいる。

――「サクレ」シリーズのパッケージリニューアルの狙いについて教えてください。

小野 今年は、昨年好調だったパインをレギュラー品に加え、レモン、パイン、あずきの3品を中心に展開した。味は基本的に毎年改良しているが、ここ数年で3フレーバー程度を揃えていただくチェーンが増えてきたこともあって、一緒に並べたときの色の違いやカラフルさなども意識し、今年は5年ぶりにパッケージも刷新した。

――消費者の多くは気が付かない小さな改良も、ブランド成長にとって重要でしょうか。

小野 例えば、ひと昔前の「サクレ」は相当甘かったが、消費者の「甘みに対する抵抗意識」のようなものが年々増えていることを受けて、徐々に甘みが少なく酸味を増やす変化を遂げてきた。
食べている途中に感じる甘み、食べた後の余韻で感じる甘みは、原材料や使い方で変わる。単に甘みを抑えるのではなく、時間の経過のなかで甘みのピークをどこにもってくるかなど、数値や実際に食べた時の感じ方を調べたうえで、フレーバーごとに決定してきた。

――さまざまなオリジナル「サクレ」を展開しているコンビニの戦略を教えてください。

小野 NBの「サクレ」ブランドについて知っていただいたうえで、各コンビニが考えるシーズンごとの戦略や課題、ターゲット層にふさわしいフレーバーをリストアップし絞り込むことで、各コンビニにしかない「サクレ」を展開している。

――他のアイスで復刻やなつかしさをテーマにした商品も多かったように思います。狙いはずばり若年層でしょうか。

小野 ロングセラーの「3色トリノ」に始まりレトロシリーズとして認知していただいている商品は、高齢層もターゲットにしている。若年層やZ世代の人口は少なく、コンビニやスーパーの来店客層の年齢も上がっている。「昔食べていたあの味」を意識した味づくりは、二次的な効果として若い世代には新鮮に映り、結果的に2つの年齢の山ができた。秋に「ミルクセーキアイスバー」を発売するが、若いバイヤーさんの中にはミルクセーキを知らない人もいた。

――来期(24年8月期)の方針について教えてください。

小野 「サクレ」「ダンディー」、マルチの「サクレ レモンバーマルチ」や季節シリーズ、90円商品という大きく4ブランド(商品群)の定着・強化。特に「ダンディー」は、特長であるチョコ菓子感覚はそのままに、ラクトアイスをアイスミルク規格に向上した。22年10月~23年3月までのKSP-POS(食品スーパー)売上をもとにした調査では、ノベルティモナカアイスの伸び率ナンバーワン商品としても注目していただけた。この勢いで配荷店を増やし、将来的にチョコとバニラどちらも通年型商品にしたい。

――今後のアイス市場にとって重要なことは何でしょうか。

小野 中心的な購買層と商品価格が上がってきた分、新たな価格帯で、人々が求める価値をみていく必要がある。値段だけ上がって商品価値が変わらなければ、消費者が離れていく危険がある。「ダンディー」は160円から180円、200円と上がってきたが、高価格帯商品が増えていくなかでチェーンでの展開も増えた。値段とともに商品の価値も上がったと理解してもらう取り組みが重要。

――今後の課題と、来期に向けた意気込みをお願いします。

小野 価格改定を実施した後も、主力品の販売数量がほぼ落ちていないのは非常にありがたい。人口が減っていくなか、今までと同じような競争ではいけない。国内では、若い世代がどんなことに興味を持って、なにを食べているかをもう一度押さえ訴求していく。同時に海外への輸出も物量をしっかりと伸ばしていく。お客様の声を大切に、絶えず求められる価値を考え、進化させる努力を続けていく。