ウイスキー事業に着手してから100年を迎えるサントリーは今年、これからの100年に向けた取り組みを開始。山崎・白州の両蒸留所の品質向上や魅力伝達の強化へ大規模投資を行う。
1899年に初代・鳥井信治郎氏が創業したサントリーは「赤玉ポートワイン」の大ヒットで基盤を築き、1923年に山崎蒸留所(大阪府)の建設に着手。ウイスキー事業への挑戦を開始した。
その後、初の本格国産ウイスキー「白札」を発売したものの、当時の大衆には受け入れられなかった。だが、信治郎氏は「日本人の味覚に合うウイスキー」の開発にますます執念を燃やし、その信念から生まれた「角瓶」が誕生したのが1937年。現在も国内売上№1のロングセラーブランドだ。「美味品質」への情熱は、歴代マスターブレンダーに脈々と受け継がれてきた。
「人と自然と響きあい、豊かな生活文化を創造し、“人間の生命(いのち)の輝き”を目指すことがサントリーのパーパス。100年の歴史は、まさにそれを体現していた鳥井信治郎の『やってみなはれ精神』そのもの。これからもウイスキーを通じて、豊かな生活文化を創造することをお約束する」。1日の会見で、鳥井信宏社長が宣言した。
山崎蒸留所と白州蒸留所(山梨県)では、来年にかけて100億円規模の設備投資を実施。仕込みや蒸留工程だけでなく原料にも踏み込んだ原酒の作り込みに挑戦し、水に浸した麦を床に広げて何度も攪拌する「フロアモルティング」を導入する。人手や手間がかかるため現在ではほとんど行われていない伝統製法だが、ウイスキーづくりへのチャレンジの象徴として復活させる。さらに白州蒸留所では、原料の一つである酵母の自社培養も開始。継続的に高品質な酵母の調達を図る狙いだ。
両蒸留所を改修し、今秋のリニューアルオープンを計画。ものづくりの現場である蒸留所の魅力を、一層体感できる施設を目指す。
100周年を記念し、ハイボール缶の限定商品も登場。6月発売の第1弾「サントリープレミアムハイボール〈白州〉350㎖缶」は希望小売価格600円。ハイボールに合うモルト原酒のみを厳選し、白州らしいスモーキーな香りが楽しめるように仕上げた。RTD商品としては異例の価格帯ながら「中味を考えると非常にリーズナブルだと思う」(鳥井氏)という自信作だ。ウイスキー「山崎」「白州」からは、100周年記念ラベルの限定商品も発売する。
各ブランドについて、蒸留所起点のコミュニケーションやギフト施策で品質価値を訴求。「ハイボールを日本のソウルドリンクに」を掲げ、飲食店だけでなく家庭でも楽しんでもらえるよう業務用・缶・瓶の三位一体で需要拡大を図る方針だ。