小麦粉以外の原料費2割増 日清製粉ウェルナがコスト高へ対応強化

日清製粉ウェルナは来年1月4日納品分から家庭用製品137品を2~25%値上げする。3年続くコロナ禍にウクライナ情勢の悪化が加わり、様々なコスト高で負担が生じているためだ。小麦粉以外のコスト高も大きく影響し、加えて円安進行はとどまるところを知らない。こうした先行き不透明な状況で、同社では値上げやコストダウンに終わることなく、新たに生まれた多様なニーズに対応し、商品価値を提供する取り組みを強化している。

日本国内の需要量の約85%を占める外国産小麦は、政府を経由して製粉会社に売り渡される。政府の小麦買付価格は国際相場、為替、海上運賃が影響し変動するが、直近の6か月はウクライナ情勢の悪化を受けて急騰。これに対して「緊急措置」が講じられた結果、10月期の政府売渡価格は4月期の価格で据え置かれた。輸入小麦の政府売渡価格は21年4月期以降、3期連続して引き上げられており、今年4月期の7万2千530円(1t当たり)は、制度開始以降で2番目に高い。製粉会社が販売する小麦粉価格も維持されたが、コストアップしたのは小麦粉だけではない。

日清製粉ウェルナでは、小麦粉のほか、一般原料、包材、製造、物流などのコストアップを値上げ理由に挙げている。小麦粉以外の原料価格は前回の改定時より2割ほど上昇し、同社は大きな負担を強いられている。

タイ産のタピオカでんぷんの仕入れ価格は約10%上がった。プレミックスでは加工でんぷんとして小麦粉の次に多く配合される。高騰の理由はバイオエタノール用途で中国の需要が増加し、でんぷんに回るタピオカ芋の供給量が不足しているためだ。蒸しケーキやドーナッツなどに用いる乾燥卵価格は150~220%上昇。鳥インフルエンザで生産量が激減したのに加え、飼料価格高騰の影響を受けている。パスタソースの原料となる米国産トマトペースト価格は、前年比で価格が約60%上昇。干ばつの影響で生産量が激減した。EU産も減産で約50%値上がった。米国産牛肉も中国の輸入量回復などで価格が約10%上昇している。軟包材価格も上昇。原料の国産ナフサ価格は半年で20~30%値上げ。製紙会社が使う石炭の価格がウクライナ情勢の影響で上昇していることから、板紙・段ボール価格も約70%アップした。

一方、物流にかかわる燃料費は約15%上昇。収束どころか「2024年問題」への対応が迫られている。海上輸送費も高止まりを続けたままだ。これらに加えて、工場のエネルギーコストが重くのしかかる。冷凍食品のフリーザーを稼働させる電力コストも今年に入ってから急上昇している。

こうした厳しい社会環境下、日清製粉ウェルナではコストアップに対応した製品施策を実施。消費者や業務用ユーザーの多様化するニーズを捉えた製品開発や既存品強化に取り組む。その一部では

①値ごろ感を意識した製品
②新しいニーズへの対応
③付加価値製品の提案
④新ジャンルへの挑戦(冷食)
⑤課題解決型新製品

といった新機軸を取り入れた。①は節約志向に応えた製品で、容量や規格のバリエーションを強化した。小麦粉やプレミックス、マ・マーブランドのパスタ関連製品の一部がそれに当たる。秋の新製品のうち約2割を占めた。②では内食需要に対して手軽さや適量、即食などの価値を付与。「から揚げの漬け込みたれ」や、1束を80gに減らした結束パスタ、適量で即食の冷凍パスタなどで対応する。

③は高付加価値ブランド「青の洞窟」で、新シリーズのパスタソース「Piccolino」や冷凍パスタソースと冷凍メーンディッシュが登場した。④はテーマパークなどで親しまれるチュロスを家庭用冷凍食品「ミニチュロス」として発売。⑤では人手不足や原材料高騰などの悩みに対応したプレミックスや冷凍パスタなど業務用9品を発売した。

新施策の滑り出しは良い。「ミニチュロス」は想定の倍近くの売れ行きで、スナック感覚の冷凍パスタ「レンジで3分スナックパスタ」などの新機軸もZ世代をはじめとした若者の支持を集めている。値上げ後も消費者から選ばれるためには、いかに商品価値を訴求できるかが問われる。同社が今秋投入した新製品は84品。来春も同規模の製品上市を計画しているという。