飲料系酒類酒税改正へ秒読み その意味...

酒税改正へ秒読み その意味するものとは 「企業努力つぶし」は本当?

 酒税改正があすに迫った。酒税率が統一されるビール類では、市場構造に大きな変化が予想される。缶チューハイなどのRTDも初の増税を迎えるとともにビール類からのユーザー流入も見込まれ、新たな競争環境への対応が問われる局面だ。このタイミングで、改めてその全体像を振り返ってみたい。「酒税改正」の意味するものとは――。

これまでの経緯は?

 今回の酒税改正は安倍政権下の16年に方針が打ち出され、翌17年に策定された税制改正大綱によってその大枠が決められた。

 麦芽比率などによって分かれていたビール類の酒税率を、ビールは減税、それ以外の発泡酒などは増税とすることで統一を図るものだ。

 業界や消費者に与える影響の緩和を考慮し、約10年の経過期間を設けて段階的に新税率へと移行。20、23、26年の3段階で実施するスケジュールも決まった。

 2010年代にかけての約20年間にわたりビールに代わって台頭してきた、発泡酒・新ジャンル。狭義ビールとの税率差が消滅に向かうことで「ビール回帰」の流れが強まると予想した酒類メーカー各社ではこの間、将来的な消費変化を見据えたマーケティングに力を入れてきた。

 過去2回の改正では「発泡酒・新ジャンル→ビール」の需要シフトがみられ、24年にはビールのシェアが16年ぶりに過半数を回復するなど回帰傾向が鮮明化。ただ他カテゴリーへの流出やアルコール離れも進んだことで、ビール類市場全体では縮小が続いている。

そもそも何のため?

 酒税改正に関して、しばしば「せっかくメーカーが安く販売できるよう工夫して発泡酒などを開発してきたのに、増税で企業努力をつぶすのか」といった批判がみられる。これは正しいのだろうか。

 90年代半ば、バブル後の景気低迷期にブームとなったのが、ビールよりも低い税率を生かして開発された発泡酒だった。

 00年代後半に入ると、さらに低税率のカテゴリーに目を付けた新ジャンルが出現し“第3のビール”ブームが勃発。これらエコノミービール類が売場を席捲した。

 「ビールらしいおいしさ」という価値を期待される点で共通し、本来は同じ土俵で競うべき商品同士でありながら、原料比率などに由来する税率の違いによって別々のカテゴリーとして扱われる。そんないびつな状況が生まれていた。

 これを背景にエコノミービール類の開発では、原料などの制約のなかで「いかにビールに近づけるか」を主軸とした競争に駆り立てられる構造が形成されていく。

 また国側としても、市場構造の変化により失われつつあった税収のバランスを立て直す必要性に迫られていた。

 財務省では今回の酒税改正の目的について「類似する酒類間の税率格差が商品開発や販売数量に影響を与えている状況を改め、酒類間の税負担の公平性を回復する」ためと説明している。

 実質的に競合する商品の税率を実態に合わせて統合することが、今回の改正の主眼といえる。そしてビールの減税分を補う形で、発泡酒や缶チューハイの税率を引き上げる。その根底にあるのは、全体の税収を大きく変えない「税収中立」の観点だ。これを単純な増税や減税としてとらえると、本質を見誤る。

 酒類メーカー各社も今回のビール類酒税の一本化を、次なる成長に向けた最大のチャンスとみて全力を傾注する。

 「増税で企業努力をつぶすのか」といったぼやきは、少なくとも当の業界からは聞こえてこない。

市場はどう変化?

 一連の酒税改正が締めくくりを迎える10月1日。ビール業界ではこの日を市場の転換点とみて、追い風が期待される狭義ビールを中心としたマーケティングに大規模な投資を行ってきた。

とりわけこの数年で大きく広がったのが、ボリュームゾーンであるスタンダード価格帯のビールブランドだ。

アサヒビールが「スーパードライ」に続く柱として21年に缶で発売した「アサヒ生ビール」(マルエフ)を皮切りに、「サントリー生ビール」(23年)、キリンビール「晴れ風」(24年)、「アサヒ ザ・ビタリスト」(25年)、“ちょっと高めの定番”を狙う「キリングッドエール」(同)、「アサヒ ゴールド」(26年)と、毎年のように新ブランドが登場。ビール回帰の受け皿となるべく、選択肢の拡充が進んだ。

一方でこうした流れとは一線を画するサッポロビールでは、二枚看板「黒ラベル」「ヱビス」のブランドコミュニケーションを磨くことに専念してきた。

さらに注目を集めたのが、各社が相次いで方針を明らかにした新ジャンルの「ビール化」だ。

「値段に大差ないならビールを」と考える消費者が増えるとみられるなか、これまで低価格を武器としてきた新ジャンルのアドバンテージは薄れる。

そこで原料に占める麦芽比率を50%以上に高めることで、名実ともに「ビール」として刷新。酒税アップ分を上乗せする他は価格帯を変更せず、引き続きエコノミービールとして販売する。

なかでもいち早く方針を発表したサントリー「金麦」、18年の発売時から計画を温めていたというキリン「本麒麟」と、この分野でシェアの高い2ブランドがビールになるインパクトは大きい。市場のビール比率は一気に高まりそうだ。

税率の違いにしばられ、各カテゴリーの枠内での競争を強いられてきた各社のビール類ブランド。酒税の一本化を契機にそんな状況から解き放たれ、ブランドごとの多様な味わいや個性、物語を競うステージに入る。

長期的には縮小が避けられない酒類市場で「27年以降」の地図をどう描くのか。新たな戦いが始まろうとしている。

ビール類酒税率の推移(財務省資料より)
ビール類酒税率の推移(財務省資料より)

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