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メルシャンが挑むネイチャー・ポジティブ㊤ ブドウ畑が生物多様性に貢献 産地の特徴生かすワインづくり

 メルシャンの日本ワインブランド「シャトー・メルシャン」では、ネイチャー・ポジティブへの取り組みに力を入れている。これまでに同社が管理するヴィンヤード(ブドウ畑)3か所が、生物多様性の保全が図られている「自然共生サイト」に認定。このうち2つを擁するシャトー・メルシャン勝沼ワイナリー(山梨県甲州市)を訪れた。

 「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる」という地球規模の目標。それがネイチャー・ポジティブだ。自然環境と密接に関わるビジネスであるワインづくりにとって、貢献が試される課題でもある。

 メルシャンが国内で展開するヴィンヤードではこれまでにも、近年加速する気候変動に対応した取り組みや環境に配慮した農業を進めてきた。

酷暑化する山梨の夏 対抗へ新品種

 「世界的な気候変動から、ブドウの品種や産地の見直しが必要になっている」と語るのは、シャトー・メルシャン事業本部長兼ゼネラル・マネージャーの小林弘憲氏。

 「(夏の高温化で)収穫時期が詰まってきて、採りたい時期に採れなくなっている。フェノールの成熟を待ってタンニン分が充実した状態で採りたいのに、それができなくなっている。収穫のタイミングが定まらない」。

 気候変動に対応した「適品種」の選定や、より冷涼な土地での栽培が重要性を増している。夏の猛暑下でも果実にタンニンが蓄積して酸を保つ品種「ソワノワール」の育成や、標高が高い農園の開発がその一例だ。

 温暖化の影響が年々強まる山梨県の夏に適応する新品種として、メルローとピノ・ノワールを交雑して県が開発した「ソワノワール」。県内のワイナリー32社に計3000本の苗木が販売された。うち約700本と最多本数を導入したメルシャンでは、昨年4月「城の平ヴィンヤード」に植樹を実施。来年に初収穫し、早ければ29年の商品化を予定している。品種特長を見極めながら、産地の特徴を最大限に引き出すワイン造りを目指す考えだ。

昨年植えたソワノワールを紹介する勝野泰朗製造部長㊧と小林弘憲氏
昨年植えたソワノワールを紹介する勝野泰朗製造部長㊧と小林弘憲氏

自生する野草とともに栽培

 1984年に開墾したメルシャン初の自社管理畑である城の平ヴィンヤード。もともと棚栽培を行っていた観光農園だったが、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、プティ・ヴェルドなどの品種を中心とした垣根仕立ての農園に転換した。

 開園当初には“山梨県のボルドー”を掲げ、本場フランス産と同等の品質を目指したワインづくりに注力。多雨によってアルカリ分が流され酸性化しやすい日本特有の土壌を中和するため、大量の牡蠣殻を撒くなどしてボルドーのテロワールに近づける試みも行われたという。

 だが近年では、その土地に固有の気象条件や土壌を生かしたブドウづくりに転換。環境に適した品種や台木との組み合わせを重視するようになった。自然に生える野草とともに栽培する「草生栽培」に取り組み、人の手で適切な農園管理を行うことで、在来種の動植物や希少な草原生態系が回復しつつある。

 昨年2月には環境省から「自然共生サイト」に認定された。事業として農産物を生産する畑としての認定は珍しい例だ。(つづく)

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