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農水畜産業ナッツ・ドライフルーツ学生が育てるアーモンドの木 明日の社会へ価値循環 デルタインターナショナル×キャンポスブラザーズ

学生が育てるアーモンドの木 明日の社会へ価値循環 デルタインターナショナル×キャンポスブラザーズ

 アーモンドの世界的産地である米カリフォルニア州でも、トップクラスの供給量を誇るキャンポスブラザーズ社。日本の販売総代理店を務めるデルタインターナショナルでは、学生の手でアーモンドの木を育てて商品化することを目指す玉川大学のプロジェクトに、キャンポス社とともに協力している。「商売を通じ価値を循環させ社会貢献する」という同社の理念を実践する取り組みだ。発案した鳥海敬社長に話を聞いた。

玉川大学と共同プロジェクト 学内に苗木植樹 収穫・商品化目指す

アーモンドが定植された学内の農場
アーモンドが定植された学内の農場

 「学生の手で育てて、商品化につなげられるようなテーマはないだろうか」。

 約4年前、鳥海氏の母校である玉川大学(東京都)で理事長を務める恩師からそんな相談を受け、アーモンド苗木の栽培を提案したことがプロジェクトの発端だ。

 長年取引しているキャンポス社のスティーブン・キャンポス社長に相談したところ、社会貢献の一環として学生への投資に積極的に協力したいと快諾を受けた。

 「仕事を通じて農業に関わっている私たちの立場から、どんな貢献ができるだろうかと考えているところだった。スマート農業が盛んな米国のノウハウ、大学の持つ研究データ、それにわれわれが蓄積してきたデータを組み合わせて、何か役に立つことができるのではないか。今回はその第一歩だ」。

 これまでにも同志社大学(京都府)の学生との商品開発プロジェクトなどを手がけてきた同社。だが農業分野では、今回のように実践的な産学共同の取り組みは初めてだ。

 「農学部の理事長や教授から『なにか学園に持ち込める良い農作物はないか』との課題をいただいた。卒業生には大手メーカーの社長も多いので、収穫した農産物の商品化を提案することも考えたいというお話だった」。

正規ルート輸入は国内初

 キャンポス社からは苗木の提供と管理の指導を、デルタとしては輸送に関わるコスト・手配を支援することとなった。

 当初は100本の苗木を輸入する予定だったものの、検疫所の枠が限られていることから「神戸」と「つくば」の2か所の検疫農場に分けて、木の休眠期である冬にようやく20本程度のみ受け入れが可能に。

 農場での検疫には1年間かかり、その間に数本が枯れてしまった。だが昨年2月、ついに玉川大学の農場に苗木が到着。十数本が定植された。

 国内でもアーモンドの栽培事例は各地にあるものの、日本の正式ルートで輸入・植樹された苗木は今回が初めてであることが後から分かったという。学術的にも大きな価値のある事例といえる。

 その後7月には、キャンポス社からスティーブン社長とクレッグ副社長が来日して大学を訪問。苗木の生育状況を確認し、栽培方法などについて学生と意見交換した。今後も定期的にこうした機会を用意する計画だ。

 アーモンドの結実には、開花期にミツバチによる授粉が欠かせない。

 「玉川大学にはミツバチ研究の長い歴史があり、有名な教授もいる。そこは全く心配がない」。自然環境に恵まれたエリアに位置する大学には、野生のハチが多く飛んでくるのだという。

早くも小さな実を付けた
早くも小さな実を付けた

 農学部の学生らが、枝の剪定や土の管理などの作業を担う。定植初年度の昨年には、早くもわずかながら収穫があった。本格的な収穫が可能になるまでには、あと数年かかるとみられる。

 ただカリフォルニアとは気候や天候サイクルが大きく異なる日本でのアーモンドの栽培手法は確立されておらず、手探りでの栽培を続けることになりそうだ。

 「日本では、収穫期に台風が来るのが悩み。またカリフォルニアでは開花期は2月だが、日本では3月。花は桜によく似ており、ソメイヨシノよりも少し早く咲くので、切り花として市場に出すことも考えられる」。

社会貢献通じ社員も成長へ

鳥海敬社長
鳥海敬社長

 プロジェクトは学生のみならず、デルタの社員にとっても貴重な学びの場だ。

 「アーモンドの木を実際に見たことがない社員も多い。だがナッツ・ドライフルーツを扱うプロとして、本物に触れることは重要である。そうした機会を増やすためにも、今回のような産学共同の取り組みを含め、今後はさまざまな形で交流を広げていければと思っている」。

 今後も、小さな活動をこつこつと続けていきたいと語る鳥海氏。

 「アメリカには寄付の精神が強く根付いており、震災の際にはキャンポス社が日本に対して多額の寄付を行った。デルタとしてもそうした助け合いの精神を学ばせてもらった。工場を持たない当社は、人材こそが最大の財産である会社。さまざまな社会貢献を通じて、社員たちに生の体験、本物に触れる体験をしてもらいたい。それが会社として健全な姿であると考えている」。

玉川大学教員のコメント

 アーモンドを定植1年目で花が咲き、果実も結実したので大変驚きました。今後は日本の気候を考慮した栽培方法を模索していきたいと考えています。そして、多くのアーモンドを収穫し、加工品などができるよう日々管理していきたいと思います。

玉川大学学生のコメント

 アーモンドの定植だけでなく、アーモンドの木を見ること自体初めての経験だったのですが、木や花の形態が桜の木に似ていて驚きました。できたアーモンドはアーモンドチョコやお菓子の飾り付けなどに使いたいと考えています。

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