菓子卸最大手の山星屋の第72期・前期(2025年3月期)業績は、売上高が前年比6%増の3571億円、営業利益が17%増の49億円を記録した。
5月19日、第68回ARISTA山星屋プロス会(プロス会)で猪忠孝社長が明らかにし「3年連続の増収増益を果たすことができた。商品供給、商品開発にご尽力いただいたプロス会会員各社さまのご協力に深く御礼申し上げる」と感謝の意を表す。
増収はドラッグストアとディスカウントストアでの売上拡大が寄与したという。
猪社長は、プロス会会員・小売業との取り組みの中で成果が得られたものとして、得意先限定のエクスクルーシブ商品(留め型商品)を挙げる。
前期はオリジナル商品・PB商品・エクスクルーシブ商品の合算で2244SKUに上り、売上高は259億円に達した。
「エクスクルーシブ商品は、元となるメーカーさまの既存ブランドの活性化に大きく寄与するという副次的な効果が如実に現れている」と語る。
「調達大作戦」と称する繁忙期での商品確保の取り組みも奏功した。
「主要得意先さまの欠品率は年間0.6%となり、前年比0.1ポイントの改善を達成することができた。欠品率の低さは多くの小売企業さまから高いご評価をいただき、当社が実施している得意先満足度調査においても満足評価比率は8割を超えている」との手応えを得る。
調達大作戦の肝は、メーカーとのコミュニケーション強化にある。メーカーからの欠品や終売の案内が急になると空いてしまった棚を埋めにくくなる。このような事態を回避すべく、メーカーとのコミュニケーションのほか現状把握につとめ、情報を早い段階で入手し早めに対応している。
プロス会会員との関係を軸足にした小売業との連携については「複数の取り組み先とは菓子の年間取引が前年比130%超という異常値を実現することができた」と述べる。
その好例として、惜しまれつつ終売した商品の復活を小売業とともにメーカーに働きかけ大ヒットに導いた事例を紹介。「我々としても菓子の新たな可能性を発見した」という。
人手不足の解消や業務負担の低減も成果に挙げる。
「過去に失った人材を補うために3年前から年間50人規模の新卒採用を実施したことに加えて、既存社員の待遇改善、さらには地域や階層ごとの全社員とのタウンミーティングや懇親会を重ねることでおのおのの抱える職場環境の課題を1つ1つ改善してきた。これにより入社3年までの離職率が一時の21%から現在は5%と低下した」と振り返る。
離職率低下に最も貢献した施策は、学生への徹底した情報開示だという。
「卸売業の仕事は良い面だけではなく、厳しい面や困難なこともあるということを率直に伝えることで入社後のミスマッチやギャップを抑える効果を生み出し、特に若年層の離職率低下につながった」と説明する。
なお、プロス会は1956年に発足。プロスとは、PROSPERITY(繁栄)を意味し「会員の皆様とともに繁栄していこうとの願いを込めて命名された」(山星屋)という。
