キリンビバレッジは、「午後の紅茶」や「生茶」の基盤ブランド頼みから脱却しヘルスサイエンス飲料を軸足にした新戦略を遂行してブランド価値向上と市場創造を加速させる。
販売計画の基軸を販売数量から売上収益へと変更し、今年、ヘルスサイエンス飲料で前年比27%増、飲料トータルで6%増の売上収益を目指す。
1月29日、井上一弘社長は「現在のヘルスサイエンス飲料の構成比は10%強。これを2030年に20%ぐらいまで引き上げ、少しでも収益率を高めていく」と意欲をのぞかせる。
2030年にはヘルスサイエンス飲料の売上収益を24年比2倍以上にすることを計画。基盤ブランドも強化し総合飲料メーカーのポジションを維持する。
「ヘルスサイエンス飲料を収益源とするだけではなく、基盤ブランドの『午後の紅茶』と『生茶』、その他のブランドに対しても、お客様に感じていただけるような良質な価値をまとわせることで事業全体に成長を連鎖させていく」と語る。
ヘルスサイエンス飲料は、キリングループ独自の素材や成分を有する商品や機能性表示食品・トクホを指す。
「ヘルスサイエンスとは、健康を総合的に扱うことを目指した複合領域の研究のこと。長生きするための身体的・精神的な状況について医学のほか情報処理など様々な知見を統合して対処することに加えて、生活の質や人生の幸福度合いを向上させるウェルビーイングを目指している」と説明する。
ヘルスサイエンス飲料の中で今年は「プラズマ乳酸菌」入り飲料の「iMUSE(イミューズ)」と「おいしい免疫ケア」の2ブランドに注力する。
免疫ケアの習慣化に向けた啓発活動にも重きを置く。
「まずは免疫ケアの習慣化を世の中ごと化するため、お子様からシニア層まで一気にターゲットを拡大していく」と意欲をのぞかせる。
中長期的に「プラズマ乳酸菌」入り飲料の間口(飲用層)が手薄な19歳以下と70歳以上に向けて新商品の投入を視野に入れる。
この新商品については「新ブランドとは限らない。既存ブランドをよりフィットするような形ができればいい」との考えを示す。
新たな販路の開拓や海外事業の展開にも意欲を示す。
海外事業については「台湾と香港でお取引があり、いずれ韓国にも進出する。これらの国や地域で基盤ブランドとともにヘルスサイエンス飲料の機会を模索していくとともに、新規の国や地域を模索し商機が見込めれば進出を検討していく」。
国内営業は、社員に事業の軸足がヘルスサイエンス飲料であることを浸透させる。
「売場の担当者がお酒を好み、または、お酒の知識があるか否かで売上げが相当変わる。実は社内も同じで、営業する際、ついつい『午後の紅茶』や『生茶』の基盤ブランドに頼ってしまうことがまだまだある。今後は営業部隊がプラズマ乳酸菌の価値をしっかり伝えていくように徹底する」と述べる。
ヘルスサイエンス飲料では、免疫ケアニーズに加えて、体脂肪対策ニーズにも着目する。体脂肪対策ニーズには、花王から昨年譲受した「ヘルシア」ブランドや「ファンケル」ブランドを活用していく。
井上社長は外部データを引き「ヘルスクレーム別飲料市場販売規模構成比をみると体脂肪領域の構成比が50%を超え3000億円弱の市場規模」と商機を見出す。
「ヘルシア」は高濃度カテキンの強みを活かして習慣化を促し、来年以降にリニューアルを計画。「少し処方も変えながらお客様に価値を提案していきたい」という。
成清敬之執行役員マーケティング部長は「『ファンケル』はブランド認知の高さと女性からの支持を活かして新規層の獲得を目指していきたい。『ヘルシア』『ファンケル』ともに、信頼を高めるプロモーションや食連動などの提案などを通じて顧客基盤を広げていきたい」と力を込める。