「ワインのプレミアマイズによる市場魅力化、新規ユーザー獲得によるすそ野拡大、そしてグローバル市場拡大に力を入れる」。
3月に就任したメルシャンの大塚正光社長は13日の会見で、ワイン市場活性化に向けた方針を表明。チリNo.1ワイナリーであるヴィーニャ・コンチャ・イ・トロ社との取り組みを通じ、ワイン本来の魅力を伝える考えを示した。
同社によれば、ワイン市場の直近8月の実績は前年同月比95%。飲酒人口の減少に加え、RTDなど他カテゴリーへの需要流出も進むワインは苦戦が続く。
「さらに国内市場では低価格帯の構成比が拡大。コモディティ化や同質化が起き、ワイン本来の価値が伝えられていない」(大塚氏)。
こうした考えから、ワインのユーザーを再定義。従来の「ライト」「ミドル」「ヘビー」など飲用頻度に基づく区分を見直し、顧客の価値観やライフスタイルを改めて分析。自らの感性を重視する「自分らしさ層」、産地や原材料を吟味して価値あるものを選ぶ「こだわり層」のほか、「健康志向層」「やりくり層」と4つのセグメントに分類した。
これに基づく価値提案で新たなユーザーをつかむとともに、同質化を脱するべくプレミアマイズ戦略で既存ユーザーへもアピール。さらにグローバル市場の拡大へ、日本ワイン「シャトー・メルシャン」の輸出事業を強化し、30年までに売上構成比20%を目指す。
コンチャ・イ・トロ社と昨年から取り組む「パシフィック・リンク・プロジェクト」。日本とチリの造り手が両国を行き来し、グローバル展開拡大を目指す「シャトー・メルシャン」と、「コンチャ・イ・トロ」の日本向けチリワインを相互に造る試みだ。
17日から発売したプロジェクト商品第2弾「コンチャ・イ・トロ アミシス2022」は、チリ産ブドウのポテンシャルを最大限に生かしつつ、調和のとれた上品な味わいを特徴とするシャトー・メルシャンのスタイルと融合。豊かな果実感と滑らかなタンニンが心地よいワインに仕上げた。
来年は日本から次世代の造り手を約2か月チリに派遣し、持続可能なワイン造りについて知見を交換する。また日本ではコンチャ・イ・トロ社から迎えた造り手とともに、よりグローバルを意識した味わいのワイン造りに挑戦。第3弾として、日本固有種のブドウ「甲州」を使った白ワイン「甲州 アミシス」を来春発売予定だ。
コンチャ・イ・トロ社でテクニカル・ディレクターを務めるマルセロ・パパ氏は「われわれにはチリでのワイン造りについてさまざまな経験があり、またメルシャンは日本だけでなくボルドーでの経験もある。さまざまな文化的背景をもった醸造家たちがともに作り上げるという点で、このプロジェクトは革新的だ」と、今後への期待感を示した。