1杯550円以上の価値創出か キリン「ファイア」5年ぶり新シリーズ 「本当はカフェのコーヒーが飲みたいがPETを購入」に勝算

 キリンビバレッジは「ファイア」ブランドから新シリーズ「アロマブリュー」を3月12日から発売し、カフェを利用するコーヒーユーザーの取り込みを狙う。

 3月11日、「キリン ファイア アロマブリュー 新商品発表会」に登壇したマーケティング部ブランド担当の諸橋桜子氏は「『アロマブリュー』の美味しさと香り高さでペットボトル(PET)コーヒー市場を変えるべくチャレンジをしていく」と熱意を示す。

 手淹れのコーヒーとPETコーヒーの併飲層が多い点に勝算を見込む。

 「コーヒーは、紅茶や緑茶、麦茶と比較して手淹れの商品とドライ飲料(RTD)の併買率がかなり高いカテゴリー。そのためPETコーヒーへの味や香りへの期待度は非常に高いものの、実際の満足度は低いというギャップがある」。

 “本当はカフェのコーヒーを飲みたいが、持ち運びやコスパを理由にPETコーヒーを買っている”ユーザーが多くいると同社は捉えている。

 期待度と満足度のギャップの中でも“焙煎されたコーヒーの香り高さ”や“淹れたての香り”に大きな開きがあることに着目し、この差を埋める香り高いコーヒーへのチャレンジに至った。

 加えて“贅沢な気分にさせてくれるものが欲しい”“ご褒美になるようなものが欲しいという期待が高まっている”といったご褒美ニーズにも着目。「この期待(ご褒美ニーズ)に対して、各社のメジャーな商品ではまだ応えきれていないという状況にある。ここにチャンスがあると我々は考えた」。

 この見方のもと「アロマブリュー」シリーズは、香り高く報酬感が得られることを意識して設計。

 シリーズ最大の特長である香り高さを実現できた理由は、新技術のアロマブリュー製法にある。

左からキリンビバレッジのマーケティング部ブランド担当の諸橋桜子氏、商品開発研究所飲料開発担当の後藤沙織氏 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
左からキリンビバレッジのマーケティング部ブランド担当の諸橋桜子氏、商品開発研究所飲料開発担当の後藤沙織氏

 商品開発研究所飲料開発担当の後藤沙織氏は「アロマブリュー製法は、熱を加えるとコーヒーの淹れたてのような香りが生成される技術。PETコーヒーを製造するにあたり、殺菌という工程が必ず必要になる。その殺菌の際の熱を利用して、淹れたてのような香り高さをPET商品で実現することができた」と話す。

 商品名を伏せたブラインド調査(N=109)では高評価が得られたという。
 「1杯に対して払える上限金額を調査したところ、シリーズ2品の平均は565円となった。今、カフェで売られているコーヒーと同等と感じていただいた結果なのではないか」と胸を張る。

 「ブラック」と「ラテ」の2品のラインアップの中で、一際高く評価されたのは「ブラック」。

 「『ブラック』は高く評価され、上限金額の平均は577円となった。また、75%の方が“カフェの味わいだと思う”と評価した」と語る。「ラテ」も上限金額の平均は553円とし、どちらも550円以上の評価となった。

 認知とトライアル拡大のため、コミュニケーションにも注力し、俳優の長谷川博己さんを起用した新CMを展開。“こんなにも、香り高いなんて”というコメントで香りにフォーカスしてアピールしている。