「上級品300g」発売60周年 そうめんの価値伝える先駆者に 兵庫県手延素麺協同組合 井上猛理事長

乾麺のNo.1ブランド「揖保乃糸 手延素麺上級品300g」をはじめ全商品の価格改定を昨年3月に実施した。今年度は新値の浸透とともに、新機軸商品の販売や海外戦略にも取り組み、手延べそうめんの価値観を広く訴求する。

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――令和5年度産手延べそうめんの生産状況は。

井上 当初計画を上回る前年対比98~99%、103万~104万箱(1箱18㎏換算)で着地する見込み。期初に97%の計画でスタートしたが、残暑や暖冬で気温が高く、また雨量も多いため生産が思うように進まない日があった。そうめんの生産期間を延長し、製造指導を一層強化して品質を安定しつつ、前年に近い生産量に近づける。組合員は3~4軒減ったが、現業者には設備投資の強化などで増産してもらっている。

――需要に対して供給できている状況ですか。

井上 22年12月に先行して主力商品「上級品300g」を価格改定して、翌23年3月からその他の卸売価格を変え、比較的スムーズに行えた。前年度の販売額は対前年比102%、数量ベースで93%だったことや市場環境をみると、今年度生産量は98~99%で十分だと判断した。

――今後、価格改定の予定はありますか。

井上 人件費、物流費などが上昇しているので毎年価格に反映させたいが、改定した価格を浸透させるために今後2~3年は市場の様子を見ていく必要があるのではないだろうか。ただ組合の卸値は変わらなくても物流コストの上昇など販社の負担は大きく、末端価格を最低2%ほど上げてほしいと話をしている。

――強化商品、販売方針など。

井上 昨年新発売した「手延ラーメン」は、地元の小麦を使った地産地消の中華麺。環境に優しい特殊な紙包材を使用しているため、資材コストを上乗せして直売所で販売するが、比較的高くても順調な売れ行き。価値を感じる人は買ってくれている印象だ。今後は海外展開を目指して展示会などで訴求を強める。また中華麺「龍の夢」は、2年前から会員制の倉庫型店でスープとのセット販売が好評。今年は規格を変更して、そうめんとのセット販売の準備を進める。そうめんは国内だけでなく海外への販売も注力する。物がないのに海外へ輸出するのかという意見もあるが、国内の人口減少を考えると、海外へ目を向けないといけない。価値の分かる人に、手延べそうめんの特徴をしっかりと伝えていきたい。

――「上級品300g」が発売60周年を迎えました。想いのほどを。

井上 時代の変化に対応してきた、揖保乃糸を象徴する商品だと思う。かつて米屋で量り売りをしていたそうめんを、スーパーが誕生した時代に合わせて6束ずつセロファンで包装し販売したのが始まり。需要増加とともに大量生産が必要となり、自動計量化のために原料、品質の向上と安定化を模索。私が就任してからはさらに美味しさを追求している。品質とトレーサビリティ管理を徹底するあまり、時には組合内で厳しいことを言ったが、そこで皆が納得してくれたからこそ今がある。これからも価格と価値のバランスを取りながら、手延べそうめんの価値を伝えていきたい。