人材派遣業が冷凍野菜に コロナで需要激減 食品事業に参入

広島市に本社を置くバンケットサービスは主にホテルや結婚式場に向け、パーティーコンパニオンやブライダルスタッフを派遣している。しかし、コロナ禍で宴会や結婚披露宴が激減。一時、売上は8割ほど減少した。

そこでJAと組んで、行き場を失った人材を広島県北部の農家などへ派遣する。農作業に従事する中で目にしたのが、規格外のため廃棄されるキュウリや大根だった。それらを何とかしたいと考えた内藤貴明社長は、得意先であるホテルや式場に野菜を持ち込む。見た目は良くないが、新鮮な地元の野菜だ。ニーズはあると信じていた。

しかし、料理人から返ってきたのは「いらない」という一言だった。コロナ明けで調理現場は慌ただしくなったが、常に人手が足りず、野菜の皮をむいたり刻んだりという下ごしらえに手間をかけられない現状があった。

内藤社長は「それならわれわれがやろう。農家とも縁ができたので、仕入れ先と売り先がある程度見込める」と決断。国の補助金を受け、広島市内にある関連会社の中に加工場を設けた。冷凍設備を導入し、昨年6月に本格稼働を始める。

使うのは3D冷凍機。3方向から冷風を当て瞬間冷凍するため、ムラがなく高い鮮度を維持できる。

加工した冷凍野菜 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
加工した冷凍野菜

主にマッシュ加工したジャガイモやカボチャなどを製造し、ホテルや飲食店、介護施設などへ提供する。使うのは県内産の野菜。「調理師や栄養士の方々に試食してもらい、高い評価をいただいた。品質は悪くないと確信している」と自信をのぞかせる。

冷凍だけでなく保管機能も備えており、飲食店からの仕事も請け負う。専門店のお好み焼を冷凍、保管し発送する業務だ。

「お好み焼屋さんは保管する場所を持っていない。当社が発送まで請け負うことで販路が広がり、ウィンウィンの関係が築ける」(内藤社長)。

関連会社ではネット販売のプラットフォームを持っており、一般向けに冷凍加工野菜を販売することも視野に入れる。

このほか、冬に仕入れたミカンを冷凍保存し、夏場に動物園へ提供する。年間を通して動物にミカンを食べさせたいが、値段が上がる夏は難しいという現状がある。

このように冷凍野菜の新たな可能性を探りながら、将来的には食品事業で全社売上の3割を目指す考えだ。