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加工食品調味料・カレー類マルカン酢 伝統に捉われない経営へ「伝統と革新」テーマに刷新

マルカン酢 伝統に捉われない経営へ「伝統と革新」テーマに刷新

マルカン酢の「お酢屋がつくったシリーズ」は、お酢屋だからできる原料、産地にこだわった、本格的な味わいが特徴。今春には「にんにくぽん酢」を、9月には「だし甘酢」と「酢のもの酢」を発売して、シリーズ合計は7品目になった。調味料、醤油メーカーなど様々な企業が参入するぽん酢市場だが、「お酢屋が作ればこんな美味しいものができる」と商品化。経営改革の一環で、自社のアイデンティティを見直したことがきっかけで生まれた。

2019年、創業370周年を機に経営陣を一新した。それまでの同族経営から、笹田隆会長と勝木慶二郎社長の2トップ体制のチーム経営に変えた。「伝統と革新」をテーマに企業改革に着手。あらゆるものを見直そうとしていた矢先、コロナ禍に見舞われた。現在は砂糖やアルコールなど原材料が高騰して、過去にない厳しい経営環境を迎えている。「激動の時代に何が起こるのか予測が立たない。当たらない予測をするくらいなら、自分たちの強みを見直すべき」(笹田隆会長)と好機に捉えた。

企業テーマの一つに「美味しい笑顔を世界に咲かそう」「元祖マルカンの名にかけて」と掲げている。マルカンとは、江戸時代の良いお酢を例える代名詞であり、その頃のシンボルだったのが同社ブランド。笑顔が出る美味しさとは何だろうかと考え、具現化した商品の一つが「お酢屋がつくった」シリーズだ。美容や健康にもよい酢が、コロナ感染拡大後の健康志向を機に再び注目を集め、食酢市場にとって追い風となった。「伝統に捉われずに考えればチャンスは広がり、それを特徴とした商品も作ることができる」(同)。同社でも新商品を中心に売上を徐々に伸ばした。

国内の経営改革に着手してから1年後に、米国マルカン酢の経営基盤を見直した。「現地と毎週オンラインでコミュニケーションをとって方針や考え方のすり合わせを行い、基本的には現地の経営陣に任せた結果、モチベーションを高めることができた」と勝木慶二郎社長は話す。

米国マルカン酢でも、家庭用、業務用、原料用向けに酢を提供する。20年は日本同様に家庭用が伸びたが、21年には外食向け業務用が復活。アメリカ事業が大幅に伸びて牽引し、19年比で連結売上高は6割増となった。

また米国市場はとうもろこしや大麦等穀物類を主原料にしたホワイトビネガーが主流だったが、近年は日本のライスビネガーが評価されマーケットが急激に伸びている。「ソースやドレッシングなどへの原料にライスビネガーの指名が増えている。食品開発者にも美味しさの認知が広がり、今後さらに浸透する可能性を感じる」(勝木社長)という。

カリフォルニア州のパラマウント工場に加え、東海岸のジョージア州にグリフィン工場を建設したことで大幅な売上増加にも対応できた。また、日本の流通環境とは異なり、買った商品を顧客自らが取りに来るのが米国の慣例のため、工場までの距離が近い方が配送費を抑えられ、メリットが多い。「おかげさまでグリフィン工場もフル稼働中。どうすれば生産効率を高められるかを考えている」(勝木社長)。同時にコストダウンも図りながら、さらなる事業拡大に向けて取り組む。

「環境適応力」育つ企業に 人事、組織、事業体系見直す

コロナ禍でこれまでにない経営を強いられた3年間半。「環境適応力」を養うために組織を見直し、実務的な決定スピードを上げるとともに、個々が自律的に動く組織を目指した。その成果を検証しながら、製造、研究開発、ブランド構築を含め、新たなビジネスモデルを模索。次なる一手に取り組む。

――企業改革の目的は。

「人を活かす経営」にと、存在意義から始まり、ミッションや人事・評価制度、給料体系も含めて見直した。コロナ禍で誰もが経験したことがない世の中になり、どんな環境でも自分で考え行動できる適応力の必要性を痛感した。会社経営は、どれだけ多くの人を幸せにできるかが最大の目的。我々が人を活かす経営に変えることは、「活私開公」の言葉のように、社員一人ひとりが自己を高め、社会に貢献することにつながる。

――人事評価制度においてユニークな仕組みを導入されていますね。

「成果評価」以外に新たに「情意評価」を採用した。例えば、まだ成果が出てないがチームや人のために、一歩、半歩でも良くしようと努力する好ましい考えや行動を評価している。また組織力向上のために、「Wevox」のシステムを導入した。社員が携帯アプリから匿名で投稿できるもので、個々の意見を可視化。それに対してひとつずつ紐をとき、解決のためのアイデアを一緒に作り上げている。繰り返していくうちに、お互いの信頼関係が生まれ、風通しがよくなる。昔なら飲みニケーションが重視されたが、今はそういう時代ではない。このほか「ありがとう表彰」という、上司が気付かない現場の行動や気遣いに、社員同志で感謝する投票・集計なども行っている。まだはっきりした成果は出ていないが、皆が自律的に動く組織になってきた。

――次の取り組みは。

企業風土が変わりつつあるので、全体のビジネスプロセスを変えようと抜本的に見直している。コスト対応力を高めて生産性を上げ、小ロットなど多様性にも対応できるように、製造、研究開発、ブランド、営業担当が一体となった組織を作った。役員会とは異なり、そのメンバーが集まれば実務的な大事なことが決まる横軸組織だ。また、できることはやろうと事業幅を広げている。例えば生産設備上、これまで紙容器に詰める商品の依頼は断っていたが、一部を外注してでも良いものを作ればいいと考えるようになった。顧客目線で注文を受け、要望になるべく応えられるように取り組んでいる。

――Instagramの公認アンバサダーを導入されましたが、その効果は。

第1期を22年9月~23年2月まで実施し、今年も第2期を8月から24年1月の期間に導入している。当社商品についての感想などのSNS投稿を月2回お願いしているが、我々が気づかない商品の魅力や可能性を教えてくれ感心させられることが多い。当社がHPや商品ラベルで商品価値を直接訴求するには限界があるが、アンバサダーの消費者目線による投稿によって魅力や特長がより伝わりやすいようだ。

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