雪印メグミルク総合企画室シニアアドバイザーの野村俊夫氏は、このほど専門紙誌らを対象とした同社主催の勉強会で「世界と日本の酪農乳業」と題し講演した。農畜産業振興機構(ALIC)での海外駐在経験などを踏まえ、各国の酪農特性や課題について解説した。
乳製品の国際需給がひっ迫するなか、日本では乳製品の4割近くを輸入している。一方でコロナ禍の需給緩和と資材価格高騰で離農が増加していることから、酪農生産の維持拡大とチーズの国産化推進が喫緊の課題となっている。
野村氏によれば、世界の生乳の約4割は地場消費されている。アジアの生乳生産はここ半世紀の間に8倍ほど急伸長し、なかでも生産国トップのインドと4位のパキスタンの成長が著しい。両国は9割が自国消費で、村の集乳センターで生産者から直接購入するなど生乳が人々に身近な存在といえる。
第2位のEUは、戦後の生産過剰からクォーター制度で抑制に転換したが、その後酪農家の収入を補填する政策もあり、低価格で価格競争率の高い乳製品を製造する輸出大国に成長した。一方で、オランダや90年代の酪農ブームで羊毛生産から収益性の高い生乳生産が拡大したニュージーランドでは、河川や地下水の汚染が深刻化。米国の南西部・太平洋岸地域など乾燥地帯での水資源も大きな問題となっている。
世界と比較した日本の酪農の特徴として、飲用向けの割合が高く乳製品工場の生産能力は低い。指定団体を通すため生産者と乳業の直接的な関わりは少ない。とうもろこしなど飼料の多くを米国に依存していることなどを挙げた。牛乳乳製品の自給率は6割程度で4割近くを輸入し、輸入乳製品のうち8割をチーズが占めることから「輸入チーズを減らして国産チーズに置換していくことが自給率向上に最も重要」(同氏)と語った。
講演後は、「生乳需給の救世主!チーズを楽しもう!」と題し、チーズとコーヒー、紅茶のペアリングを楽しむ試食会を実施した。
同社マーケティング部の山本恵美子氏が、世界遺産「ベームスター干拓地」で集乳されたミルクから作ったオランダCONO社の「ベームスター ロイヤルグランクリュ(ハード)」など5種類のチーズを紹介。
「LIMENAS COFFEE」オーナー兼リメナスコーヒー合同会社社長の元明健二氏が、深・中・浅煎りのコーヒーとほうじ茶でそれぞれのチーズと相性のよい飲み方などを提案した。