永谷園のお茶づけ製品がずっと売れている。今年はいわゆる巣ごもり需要で爆発的に売れた家庭用食品は多いが、次第に前年並みに落ち着く商品や、親戚筋のふりかけは行楽需要の消滅でおにぎり向けが不振となり、トータルではマイナスに転じるメーカーもある。その中で簡便、安価、なじんだ味の永谷園のお茶づけ製品は2月から10月まで最大35%増のプラスを維持した。
いわゆる“お茶漬け”(永谷園は商品名として「お茶づけ」)の裾野は広く、乾物を扱うメーカー(特に海苔)は全国的に品揃えの一環として販売するケースが多い。そのほか地方の特産物を配合したお土産など多種多様な商品が存在する。その中で「お茶漬け商品と言えば」で答えが一致するほど浸透した商品の一つであることは間違いないだろう。
その看板商品「お茶づけ海苔」を中心とした各お茶づけ製品が今年は好調だった。右グラフにあるようにお茶づけ商品全体では2、3、4月の休校や緊急事態宣言に伴う巣ごもり需要で前年比116~127%の大幅増となり、5、6月に家庭内在庫を食べきると、コロナ第2波の7月は再び126%と大きく伸びた。8月は前月対比では下がって見えるが、それでも110%の二ケタ維持。さらに9月からは「めざまし茶づけ」キャンペーンを開始すると相乗効果で135%まで伸びた。10月も109%、11月は前年に「ワンピースコラボキャンペーン」を大々的に展開した反動減となったが、それでも例年に比べると好調を維持している。(表下記事続く)
注目は7月の126%だ。最初の“巣ごもり第1波”と同レベルの伸長ぶりが見られる。主力の徳用タイプに加え、新規ユーザーは小容量タイプやアソートタイプを購入し、全体の販売ボリュームを再拡大させている。また、追い風を受けているドラッグストア業態でも大幅伸長したようだ。
家庭用のお茶漬け市場は永谷園がシェア8割(推定市場規模・約150億円)とも言われる超寡占市場で、それゆえに市場活性化も“永谷園次第”となり悩みも大きい。昨年までは「欅坂46」(現・櫻坂46)や「ワンピース」など有名どころとのコラボキャンペーンに刺激策を求めていた。
かつては、ただひたすらお茶づけを食べる“シズル100%”のTVCMで過去最高売上げを記録したり、「ラーメン茶漬け」といった脱・お茶路線など、あらゆる可能性を探ってきた。ただ、いずれも効果はやや短期的だった。図らずもコロナ禍で活性化が果たされた「お茶づけ海苔」はもうすぐ(再来年)発売70周年を迎える。