既存店異常値続く 「緊急事態宣言」が影響 4月量販業績

2020年4月小売流通 市況

緊急事態宣言の発出による不要不急の外出自粛要請を受け、量販の4月度既存店伸長率は異常値=表=が続出した。総合スーパー(GMS)は衣料品等の不振が響き全体的に苦戦したが、食品スーパー(SM)は内食需要の拡大で客単価の二ケタ増により大幅な伸びとなった。

GMSは食品こそ堅調だったが、「外出自粛やテレワーク推進の影響により春物衣料や入園入学関連商品、スーツなどのビジネス関連商品が大苦戦」(ユニー)、「前年比52%」(イオン北海道)という衣料品の不振、時短や休業なども影響。平和堂を除き、既存店伸長率は前年割れとなった。

一方、SMは外食需要の取り込み、巣ごもりニーズなどもあり、全国的に3月度を上回る大幅な伸びとなっている。

営業時間短縮や休業などの影響を受け客数は100%割れが多かったが、客単価は別表の通りほとんどのチェーンが二ケタ増。ヤオコー(129.6%)を筆頭に、ライフコーポレーション、マルエツ、いなげやなど首都圏を主戦場とするチェーンは客単価が120%台となった。

ヤオコーの客単価の内訳は、1品単価104%に対し買上点数124.5%となっており、緊急事態宣言が巣ごもり需要を刺激。客数は減少しながらも、既存店伸長率を大幅に伸ばす原動力となったものとみられる。

西日本、食品スーパーと大型店で明暗 前月より鮮明に

西日本に展開する主要スーパーの4月の業績は、大型店と食品SMでその明暗が前月よりもさらに鮮明となった。

4月の既存店売上高前年比はマックスバリュ西日本が110.7%、ハローズが114.4%と、いずれも3月の伸長率をさらに5~8ポイント上回り二ケタ増に。オークワは前月とほぼ同じペースながら、112.1%と二ケタ伸長を維持した。

ドラッグストアでも同様の傾向が見られ、コスモス薬品を例に挙げると4月は117.5%と3月の伸長率を10ポイント以上上回っている。

3月から学校が長期休校に入ったことに加え、緊急事態宣言が発令された4月半ば以降はテレワークなどにより家族全員が在宅となった家庭も増えた。それに伴い、スーパーにおける食品の購買も急増。小売各社は新型コロナ対策として営業時間の短縮やチラシ配布の見直し、ポイントセールの中止などを実施し来店客の抑制を図った。

実際、売上げの大きな伸びに対し客数の伸び率はオークワが101.7%、マックスバリュ西日本が100.8%、ハローズが101.4%など概ね2%以内に収まっており、買上点数の増加が売上げ増につながったことが見て取れる。

一方、大型店の比率が高いイズミ、フジは前月よりも業績が悪化した。4月の既存店前年比はイズミが64.6%、フジが82.9%でそれぞれ前月より23ポイント、10ポイント低下。いずれもテナント売上げの落ち込みがその大きな要因となっている。

イズミは3月初旬に大型店にある専門店の営業時間を短縮、その後、GW前の4月25日から大型店67店の専門店を休業とした。フジも最大店のエミフルMASAKIの専門店が4月23日から休業に入った。

現在はいずれも営業を再開しているが、イズミ、フジともテナントの売上構成比が37~38%と直営の食品売上げよりも高く、全体の売上げに与える影響は小さくない。

大型スーパー以上に苦戦を強いられているのが百貨店だ。平日の短縮と週末の休業により、営業時間は大幅に縮小。4月の売上高前年比は阪急阪神百貨店19.5%(3月62%)、大丸松坂屋百貨店22%(3月57.1%)など前月からさらに30~40ポイント落ち込んでいる。

5月も終盤を迎え、緊急事態宣言の解除とともに学校や企業活動も徐々に再開へと向かいつつある。4月の“異常値”が大型店や百貨店にとっては底となり、食品スーパーやドラッグストアにとってはピークとなるのか。いずれにしろ、終息へ向け新たな局面を迎えることになる。