冷凍食品 新型コロナの影響色濃く 家庭用・業務用で明暗

新型コロナウイルス感染症拡大を受けた外出自粛や緊急事態宣言により冷凍食品も大きな影響を受けた。スーパーでは混乱を避けるためにチラシを取り止めているケースもあり特売価格は一時的に減少しているものの家庭用は伸長。一方で外食や給食向けの業務用は落ち込んでいる。

2月末頃から在宅勤務、休校等が増えたことから3月の家庭用冷食市場は2ケタ増。全業態で高い伸びがみられるが、特にドラッグストアでの購入が増えており、日用品との「ついで買い」が増えたとみられる。

4月以降もその流れは概ね続いており、米飯、麺といった主食系を中心に伸長。またお好み焼きなどのスナックや惣菜系も伸びている。働き手や子供が家庭で喫食することから、簡便な昼食としての利用がメインとみられるが、人数分を満たすために夕食のおかずにも、これまで以上に使われているとみる向きも多い。

ただ、家庭用の中でも弁当向け商材は弁当需要の減少がそのまま影響しており、これまで以上に「弁当市場の厳しさが増した」(メーカー)との声は多い。

一方で業務用は外食、給食、イベントなどで深刻な影響を受けている。特に酒類提供店やホテルは厳しい。量販店惣菜、宅配などは前年を超えているが、業務用全体の落ち込みをカバーしきれない。業務用市場は家庭用よりも規模が大きく,「家庭用での巣ごもり需要の取り込みだけではカバーできない」(メーカー)と冷食市場全体へのマイナス影響も懸念されている。

緊急事態宣言が終了するなど「事態が好転すればある程度、業務用も回復するだろう」というが、「新型コロナ自体が広範に収束しない限り、以前のような状態には戻らない」との悲観的な見方も多い。

家庭用生産はフル回転だが、生産が追い付かないわけではない。各社ともに安定供給に努めており当面は問題なく生産できそうだ。また、落ち込んだ業務用の生産ラインを家庭用生産に回すことも一部では行われている。

収束後に向けた取り組みを検討する動きもある。来年の五輪やインバウンド復活に向けた商談などを予定するところもあるが、いつ収束するか次第でもあり「単純に計画を組めない」との声も多く聞こえる。

また、コロナ後には社会環境が変化する可能性も指摘されている。ある営業担当者は「災害対策の意味も含めてテレワークをそれなりに続ける企業も多いだろう」と話し、「働き方や人の流れが変われば社会自体が変わる。その変化を先読みすることが、今後数年間の、生き残りのカギになる」とする。他の関係者も「収束後のことを思い込みで決めつけず、日々の業務を冷静に行いながら、柔軟な見方を養うことが肝要だ」と話している。