畜産の新たな社会的価値の創出研究開発プラットフォームは9月29日、都内で2回目となるシンポジウムを開催し、産学官の専門家がそれぞれの立場から登壇した。会場では持続可能な畜産業の未来に向けたアニマルウェルフェア(家畜福祉)の実装と日本の生産現場における課題について議論した。
農水省畜産振興課課長補佐の中野光氏は、国が進めるアニマルウェルフェアに関する飼養管理指針の取り組み状況を公開した。同氏は6畜種を対象に、国際獣疫事務局(WOAH)の国際コードを踏まえて策定した国の指針をあらためて解説。その上で生産者の実施状況をもとにした今後の目標を提示した。中野氏は「達成水準を90%以上に維持しながら、各農場が『あてはまる』と回答する割合を高める。また、暫定目標として実施率が80%未満の項目について10%引き上げることを目指す」と語った。

たまご知識普及会議運営委員会委員長の齋藤大天氏は、日本版アニマルウェルフェアが直面する現状と課題を解説。養鶏・鶏卵産業の持続可能なあり方を提言した。
齋藤氏は、日本の養鶏産業や加工企業による世界最高水準の衛生管理に言及。「われわれが手ごろな価格で安心して卵を生食できるのは当たり前のことではない」と強調した。さらに、欧州を中心に議論が先行する飼育環境の話題に触れ、「飼養管理の議論において、感情的な二元論から脱却すべきだ」と指摘。「ケージか平飼いか、どちらか一方が単一の正解だと結論づけること自体が、アニマルウェルフェアの本質ではない」と主張し、地域の風土や供給の安定性、衛生面を踏まえた日本独自の現実的なアプローチの重要性を述べた。
