ポッカサッポロフード&ビバレッジは、今年で発売10周年を迎える「加賀棒ほうじ茶」で大規模リニューアルを行い、ほうじ茶飲料市場で独自ポジションを確立する。
8月25日に525mlPETと275mlPETの2品、9月8日に業務用の1Lパックをそれぞれリニューアル発売する。
「大規模なリニューアルは5年ぶり。『加賀棒ほうじ茶』の味わいや訴求も、競合と同質化し独自性が希薄になってしまったことから、独自性や希少性を強化して他社との差別化を図り、これまで取り逃がしていたお客様や新たなお客様を獲得したい」と意欲をみせるのは、マーケティング本部ブランドマネジメント部の安藤彩音氏。8月5日に開催した商品説明会に登壇した。
安藤氏は「発売当初の2015年は、茶系飲料市場は緑茶飲料が主流だったが、15年から24年にかけて、ほうじ茶はお菓子やアイスのフレーバーとして親しまれ、ほうじ茶飲料はホッとする優しい味わいで支持が広がり伸長した。今後もほうじ茶市場には大きな可能性がある」との見方を示す。
一方、懸念材料としては、ほうじ茶市場に競合商品が増えてきたことでコモディティ化が進んでいることを挙げ、今回、大規模リニューアルに踏み切った。

リニューアルでは、「加賀棒ほうじ茶」ならではの価値に立ち返った。原料と焙煎を見直し「加賀棒ほうじ茶」らしい濃い味わいや華やかな香りをよりしっかりと感じられる中味へと磨きをかけた。
業務用も同様に、原料や焙煎を改め、粉砕茶葉を初めて入れ濃い味わいを強化した。
濃い味わいはより上の世代や男性からの支持が高いことを踏まえ、ターゲットも再定義した。
「大人の加賀棒ほうじ茶」を新コンセプトに掲げ、メインターゲットを従来の30-40代の女性から40-50代の男女へと改めた。
パッケージは、これまでのブランドイメージの赤と黒の格子柄や金色のアクセントを踏襲しつつ、新しくなった味わいを表現。「男性にも手に取っていただきやすいデザインに仕立てた」という。
格子の赤をより深い赤色にすることで、深い味わいを印象付けた。これまでは急須のアイコンを金色で入れていたが、金色の帯の上に急須のアイコンを入れることで高級感の打ち出しを強化した。
リニューアルした深い味わいと華やかな香りを端的に伝えるべく、「深く、香る」のコピーもあしらった。
「加賀棒ほうじ茶」の525mlPETは量販店で、275mlPETは自販機で主に購入されており、業務用の1L紙パックは料飲店で使われていることから、今後は各チャネルでのタッチポイントを増やしブランド内で相乗効果を図っていく。

今回のリニューアルを原材面で支えるのは油谷製茶。「加賀棒ほうじ茶」で使用される原料の火入れを行っている。
油谷製茶の油谷陽祐専務は「特に火の入れ具合が難しかった。ほうじ茶は、焙煎の温度が1℃違うだけでも違う味になる。火のあたっている時間でも味が変わるため、何度も調整しながら味を決めた」と振り返る。
油谷製茶では、遠赤外線と直火の両方で熱を加える焙煎を行っている。
「遠赤外線は高温になるため焦げやすく、技術的に難しいため、石川県では唯一当社のみが行っている焙煎方法。まさに唯一無二の加賀棒茶」と胸を張る。
なお、加賀棒茶は「加賀地方を発祥として、加賀地域に由来する製法により、石川県内で茎茶を使用し仕上げ加工されたほうじ茶」と定められている。
10年前の発売当時、ポッカサッポロから話を持ち掛けられた油谷製茶の油谷祐仙代表は「おいしいお茶を丁寧に届けたいと考えていたため、ペットボトル(PET)のお茶は最初やりたくないと思っていたが、ポッカサッポロのご担当者さまが毎月来られ、少しだけなら作れるかなと思い作ってみたところ、ヒットしてしまった。今では発売から10年が経ち、加賀棒茶の認知も上がって嬉しい気持ちだ」と笑顔を見せる。
油谷専務は「地域によっては、加賀棒茶を見たことがないという方もまだいらっしゃる。PETでもリーフやティーバッグでも、どんな切り口でも加賀棒茶はおいしいと思っていただきたい」と力を込める。
商品が広がることで、能登の復興にも期待を寄せる。
「昨年1月の能登半島地震で、当社の工場は大規模半壊となった。奥能登では、今でも生業ができていない方がたくさんいらっしゃる。ポッカサッポロさまとしっかり手を取り合って開発した商品が、一人でも多くの方においしいと思っていただき、石川県のことを思っていただくきっかけになれば嬉しい」と述べる。