精霊流し

長崎には「精霊流し」という伝統行事がある。その年の盆前に逝去した人の遺族が故人の霊を弔うために毎年8月15日に行われる。遺影や色鮮やかな花で飾られた精霊船をけたたましい音の爆竹を鳴らしながら率い、故人の御霊を極楽浄土に送り出すというものだ。

▼爆竹をならす風習は中国から伝わったとされ、精霊船が通る道を清める意味があるとされる。地元長崎県出身の歌手さだまさしの曲として40年以上も歌われている。歌はどことなくしんみりしたメロディや曲調だが、実際はそのイメージとはかけ離れている。

▼家々で故人の趣味や趣向を盛り込み細部までこだわって作られた精霊船にはそれぞれの特徴がみられる。また精霊棚には萱で編んだ精霊菰をひき、「むかえだご」と呼ばれるお団子や長崎特有の落雁の口砂香(こうさこ)、盆菓子をはじめ、先祖をもてなすための料理をお供えする。

▼今年は筆者の親族が鬼籍に入ったため、精霊流しに初参加する予定となっている。在りし日の故人に思いを馳せながら長崎の街をゆっくり練り歩いてみようと思っている。