「これまでのやり方では、もう人は集まらない。意識を変えないと」。業務用食品卸のトップは、外食・物流業界の人材争奪戦の現状をこう語る。
▼今年の春闘は大手企業を中心に過去最高額の賃上げが相次ぎ、小売や外食にもその波は広がってきた。UAゼンセンによると流通部門、総合サービス部門の妥結額は5%を超える高水準を確保。課題となっている産業間の格差是正の成果も出てきたようだ。
▼冒頭の業務用卸でも、10年前は90日前後だった年間休日を115日に増やし、さらに個人のスタイルにあわせて働き方が選べる勤務体系を導入。賃金や手当などの待遇改善も進め人材確保に取り組んでいる。物流2024年問題が懸念されるなか、若手配送スタッフや元気な営業マンが増えており、業績も右肩上がりで伸ばしている。
▼賃上げの継続には原資となる収益力強化が欠かせない。「厳しい環境だが売上・利益を稼いで給料を上げる。それができない業界・企業は人が集まらず、成長は難しい」。人手不足と賃上げの流れは、産業間の競争激化と淘汰を加速させる。