北海道は全国屈指のラーメン王国として知られる。札幌の味噌、函館の塩、旭川の醤油がメジャーだが、釧路や稚内のご当地ラーメンも存在感がある。その市場を支えるのは地元製麺業者で組織される北海道製麺協同組合。「道麺(どうめん)」の愛称で親しまれ、現在は約35企業が加盟。近年は北海道産小麦を使用した製品のPRに力を入れる。事務局長の平美蓮さんは「北海道のラーメンを食べる際は地域や小麦の違いも味わってほしい」と話す。
組合は、平事務局長が手がける「麺カフェ 乙人(おと)」内に事務局を置く。店舗は約5年前にオープン。おいしい麺とコーヒーが楽しめる場として近隣住民らが足しげく通う。一番人気の「濃厚みそラーメン(マー油付)」、あっさり味の「タンメン(塩ラーメン)」、リピーター多数の「釧路ラーメン(醤油味)」などのラーメン類をはじめ、「ざるそば」「たぬきうどん」などの麺類、さらには「チャーハン」「中華丼」までメニューは幅広い。コーヒーをじっくり楽しめる「トーストセット」も品揃え。店内には組合員の市販品を販売するコーナーもある。
22年11月、隣接する駐車スペースの一角に冷凍自販機を設置した。販売するのは道産小麦を原料にした商品。現在(23年4月時点)は西山製麺「味噌ラーメン」、望月製麺所「閻魔ラーメン」、さがみ屋「飛燕の塩ラーメン」、ホクメンフーズ「稚内カレーラーメン」、佐々木製麺所「富良野スウプカレーラーメン」をラインアップする。いずれもスープ・具材付き。平事務局長は「一般の方に道産小麦を知っていただくキッカケになれば。品種には『春よ恋』『ゆめちから』『キタノカオリ』などがあり、それぞれ食感や色味にも特長がある」とアピールする。また、組合のホームページでは北海道の「麺」専門をうたい文句にしたショッピングモール「北の麺」をオープン。道内各社が自慢のラーメン詰め合わせやスープを販売し、本州からリピート購入するファンも多いという。
3月下旬、インスタグラムに公式アカウント「domen_hokkaido」を開設した。北海道産小麦の魅力を広めていくことが目的。すでに「北海道産小麦使用のラーメン店」「北海道で収穫される小麦の品種」などを紹介した。今後は組合が参加するイベント情報なども発信していく。
直近の組合員は約35企業で、ピーク時の200企業からは大きく減少した。マーケット内の競合激化、M&Aによる統合、後継者難を理由に撤退したケースは少なくない。とはいえ、「新たな麺の開発や販路の開拓に熱心だったメーカーは残っている。これからも業務用、市販用、給食など販路を問わず多様なニーズに応えていくことが重要」(平事務局長)と展望する。