「大麦の魅力伝える伝道師に」 需要増加に手ごたえも 豊橋糧食工業 伴野公彦社長

「大麦の魅力を伝える伝道師になりたい」。昨年8月に就任した豊橋糧食工業(愛知県豊橋市入船町)の伴野公彦社長は“大麦愛”を前面に出す若手社長だ。戦後食糧難の時期に1千300工場あった精麦業界は現在、国内工場数が最盛期の1%にまで激減。大麦需要(食用)も同期間で10%以下にまで落ち込んだ。戦前米問屋だった同社は、戦後の米不足のなかで精麦業に参入し設立76年目。「国内市場はこれ以上ないほど市場規模が縮小したが生き残った」と苦笑いするも、消費者の意識の高まりを背景にした大麦需要の漸増に手ごたえを感じている。

入社後、生産、商品開発、営業とすべての業務を経験した。大麦の新たな機能性研究や食べ方提案は競合各社も注力しているが、開発に携わった「もち麦シリアル6.6」はジャパンメイドビューティアワード(インナービューティ部門)で審査員賞を受賞。国産大麦使用のシリアル製品としてシリーズ化した。次いでローストアマニ、国産発芽大麦粉を配合したシリアルバーなど、健康志向に対応した大麦製品の品揃えを強化してきた。今年人気の大豆粉を使用したレシピ提案では、国産大麦(富山県産六条大麦ファイバースノウ)を主原料にした「お好み焼きセット」を今春発売し好評を得ている。

伴野社長は今後の商品開発について「東南アジアでは大麦原料の飲料・バーリーが定番ドリンク。国内でも主食以外でメニュー提案したい」としており、商品開発、営業に並行して“伝道師”となるべく大麦の情報発信を強化していく考えだ。インスタグラムは社内の女性チームが中心に2年前から取り組んでおり、大麦レシピ提案を随時更新、フォロワーも着実に増えてきた。

大麦の魅力は、βグルカン含有量の高さ、血糖値上昇抑制効果、血中コレステロール低減、腸内環境改善などに加え、食物繊維が豊富で、水溶性、不溶性食物繊維のバランスも良いこと。小麦比では伸展性、膨張性で劣るがデンプンの分解力は穀物中でも最大とされている。

「コロナ禍中に読んだ書物で、古代メソポタミアの貨幣の紋章に大麦が刻まれていたことを知り勇気づけられた。健康効果の高さ、汎用性の広さを商品に落とし込んで訴求できれば、大麦需要は確実に回復する」と期待をかける。

「夢はグローバルニッチなトップ企業。精麦業はニッチなので、すでに一つクリアしている(笑)。品揃えを広げて輸出事業にも着手していくが、まずは大麦の魅力を知らしめることが先決。会社の業績はその結果として付いてくる」と抱負を述べている。