和菓子×醸造の町 日本庭園と甘味楽しむ 江口だんご摂田屋店

新潟県長岡市の摂田屋地区は江戸時代から続く醸造の町として知られ、現在も日本酒・醤油・味噌・サフラン酒の6蔵が事業を営む。その一角に2022年夏、創業明治35年の江口だんご(本店・長岡市宮本東方町)が「摂田屋店」をオープンさせた。敷地面積は約700坪。古民家風の店舗で日本庭園を眺めながら、人気のみたらし団子やプリン、煎茶などを楽しめる。江口太郎社長は「周辺の各蔵とも連携しながら、おいしい理由は摂田屋にあることをアピールしていきたい」などと話した。

記者が摂田屋店を訪問したのは平日の午後2時頃。庭園正面のソファ6席は若い女性客らで埋まっており、20席以上あるテーブル席もほぼ満席だった。江口社長は「魅力ある大好きな町に出店できて光栄」と笑顔を見せる。

江口太郎社長(江口だんご) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
江口太郎社長(江口だんご)

看板メニューの「摂田屋だんごセット」(900円)は、当地区ならではの素材を存分に生かした。「みたらし焼きたてだんご」のタレには、越のむらさきと星野本店の醤油をブレンド。オリジナルの「粕雪(はくせつ)煎茶」は、県内最長の歴史を誇る清酒蔵・吉乃川の酒粕をメーンに肥料を作り、冨士美園(村上市)の茶畑で栽培に使用した。「野菜 糀漬け」は、星野本店の糀に漬け込んだ。

ほかには和のテイストを取り入れた「だんご屋プリン」、加勢牧場(長岡市)のガンジー牛乳で作ったソフトクリーム、定番のあんみつなどが人気メニュー。売店では摂田屋店限定のどら焼きなどを販売。店外には雁木の下で焼き立ての団子を味わえるスペースもある。

「醸造の町でわれわれだからこそできることをやっていきたい。和菓子は子どもから大人まで幅広い客層に興味を持っていただきやすい利点がある。当店をキッカケに周辺の日本酒・醤油・味噌蔵を訪問するなど、摂田屋地区の活性化にお役立ちできれば」(江口社長)。

古民家を核に伝統をつなぐ

古民家風の外観(江口だんご 摂田屋店) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
古民家風の外観(江口だんご 摂田屋店)

「本店」は、長岡の中心市街地から車で約30分の宮本東方町にある。のどかな田園風景に囲まれた約1千500坪の敷地内に、雪国・新潟ならではの知見が生かされた古民家を復活させ、2005年にオープンした。美しい景観を眺めながら伝統的な雰囲気や味わいを楽しめる甘味処として、今では地元のみならず、県外からも多くのファンが訪れる人気店になっている。

原点は約30年前、江口社長が20代前半に大分・別府市で菓子作りの修行中、湯布院に訪れた際に見事に再生された古民家茶寮の素晴らしさに感銘を受けた経験がある。そして、それが新潟から移築された建物であったことにも驚かされた。「古いまま改修するのではなく、現代の建築技術・デザイン・照明などを生かして再生させれば、自分と同じように若い人にも感動を与えられるはず」と将来を思い描いたという。

いまや理想が現実になりつつある。江口社長は「古民家の再生を核に、日本の伝統行事や風習をつないでいくことにも取り組んでいきたい」と次なる夢を展望する。