メルシャンは23日、日本ワイン事業の近況や戦略について発表した。会見した長林道生社長は「日本ワインはこれからのワイン市場を活性化する最大のキーになる。ここ数年の市場は目覚ましい伸びを示し、国内ワイナリーも300を超えた。一方でワイン市場における構成比は4%とまだ低い。シャトー・メルシャンが先陣を切って市場を牽引するとともに、業界で切磋琢磨していきたい」と表明。ワイン事業は5大ブランドに戦略を集中し、デイリー、中価格帯、ファインの全領域で成長性の高いポートフォリオ構築を目指す方針を説明した。
同社の1―4月の日本ワイン販売数量は、前年同期比130%。このうち主力「シャトー・メルシャン」は143%と躍進している。またワイン全体でもデイリーが2%増、ファイン32%増と好調な一方、チリワイン「カッシェロ・デル・ディアブロ」を中心とした中価格帯は11%減と苦戦。ただ、これは日欧EPA発効の影響による一時的なものとみており、下期以降の挽回を見込む。
同社では日本ワインのトップランナーとして、海外への輸出や情報発信を通して国際的な評価を獲得することで、国内の需要も盛り上げたい考え。「日本のウイスキーが海外で評価されて日本人が改めてその価値に気づいたように、ワインでも同じことをやっていきたい」(長林社長)。
昨年9月には桔梗ヶ原ワイナリー(長野県)がオープン。今年9月にオープンする椀子(同)、昨年にリニューアルした勝沼(山梨県)と合わせ、ファン拡大やグローバルブランド化を目指した3ワイナリー戦略を推進する。
周囲をブドウ畑に囲まれた椀子ワイナリーは、03年に農園が開園して以来、地元の人々とともに造成・植栽を進めてきたブドウ生産の拠点に誕生。初年度5千ケース(720㎖×12本換算)の生産を計画し、最終的に1万ケースへの拡大を見込んでいる。
来訪者には栽培から醸造まですべてを公開し、地元・上田市の農産物を使ったおつまみをワインとともに提供。地域社会の活性化にも一役買う。遊休農地の再活用などとともに、事業を通じて社会課題を解決するCSV経営の実現を図る。
「かつては世界のワインと戦えるよう無理な抽出を行った時期もあったが、そうではなく日本庭園のようなバランスの取れたワインを造りたいという思いがある。ひと言でいえば『調和』。日本のテロワール(風土)を生かし、地域社会の調和も大切にすることをフィロソフィーとしていきたい」(前田宏和マーケティング部長)。