アサヒグループHDは、アサヒバイオサイクルが製造・販売するビール酵母細胞壁を加工処理した農業資材(肥料)を活用し、開発途上国での農業課題の解決に貢献するとして国際協力機構(JICA)と連携協力する覚書を4月25日に締結した。
この資材はビール醸造後に除去する酵母を利用するもの。植物に与えると免疫力が高まり、根の成長を促進する効果を高めるだけでなく、土壌の有用菌を活性化させるという2つの効果を持つ。
結果として農薬や化学肥料の使用量を抑えられること、食品由来で安全・安心であること、病気への耐性が強化・収穫量の増加・土壌の改善などで農作物の品質が向上すること、収穫量当たりの温室効果ガス排出量が削減されることなどが実証されたといい、国内では既に栽培に利用されている。稲作での使用例では、収穫量が40%増。健康に育つため殺菌剤や殺虫剤の散布回数が減少したとしており、第25回地球環境大賞農林水産大臣賞を受賞している。
ASEANなどの開発途上国では小規模農家比率が高く、技術・情報不足等で生産性が低いものの、より安全・安心な食品等へのニーズが高まっており、今回の資材を課題解決のために導入する。
同グループはラオス、インドネシアの農業プロジェクトに対し資材をサンプルとして提供。JICAとともに技術支援を行う。両国では将来的にニーズに沿った作物や、日本ブランドの野菜などの高付加価値作物の安定的な生産に協力していく予定だという。
またアジア、アフリカ、中東などから参加する研修員が学ぶ日本国内のJICA研修センターで、同グループの農業資材の特別研修を行い、自国での使用を促すとしている。
同グループ中期経営方針には「稼ぐ力の強化」「経営資源の高度化」とともに「ESGへの取組み深化」が掲げられており、事業を通じた持続可能な社会への貢献を求めている。勝木敦志常務取締役兼常務執行役員CFOは「利益も上がり、世界も豊かになれば」と期待を滲ませている。