ビール業界にとって書き入れ時の年末商戦が、異例の事態だ。アサヒグループへのサイバー攻撃によるシステム障害でアサヒビール商品の出荷が停滞している余波から、他の大手3社に想定を上回る注文が殺到。歳暮の定番品目であるビールギフトにもしわ寄せが及んでいる。
キリンビールは11月19日、歳暮ギフトを全面的に販売停止することを発表した。
同社では注文が急増している定番商品の安定供給を最優先に、当初予定していたギフトのラインアップ17品を3品に絞り込んで展開していた。だが3品についても12月1日からからの休売を決定。「想定を上回るご注文を継続していただいており、安定供給が困難なため」としている。
やはり一部のアイテムに絞り込んで展開していたサッポロビールも、北海道限定4品を除く歳暮ギフト全商品の販売を中止することを21日に発表した。
サントリーはすでに13品の販売を中止しており、今のところ5品のみでの展開を続ける方針。
冬のギフトでは、ビールは洋菓子に次ぐ販売規模を持つ主役級カテゴリー。なかでも「スーパードライ」を主体とするアサヒのギフトセットは稼ぎ頭のひとつだが、流通各社のカタログやギフトサイトでは、供給の不安定化を受けて、アサヒ商品の大幅縮小や取り扱い中止も目立つ。他社でも販売中止や大幅縮小が相次ぎ、ギフト市場全体への影響が懸念される。
9月末から続くアサヒグループの障害の影響は、10月の各社販売実績にも表れた。
受注を手作業に切り替えて出荷を再開したアサヒビールでは、金額ベースで前年同月の9割を超える売上を維持。また他社のビール類販売実績をみると、キリンは119%(金額ベース)、サッポロは113%(数量ベース)、サントリーは100%(同)。
全力で復旧にあたるアサヒが平常時の売上構成比の8割まで出荷再開にこぎ着けたことに加え、他の3社が注文殺到を受けて出荷調整を行ったこともあり、変動幅は当初の予想より抑えられたとの見方が強い。
ただアサヒのシステムの年内復旧は難しいとみられ、間もなく迎える忘年会シーズンへの影響は避けられない。来秋に控えるビール類酒税統一の一大イベントを前に、業界は試練に立たされている。


