今秋から梅干は国産・中国産ともに価格改定の動きが広がっている。10月以降、量販向けは紀州産で1割前後、中国産では1割弱の値上げが進行。直販系のプレミアム家庭用では、紀州産を中心に3割前後上昇した。
紀州産原料が逼迫するなか、中国産梅も円安に加え、輸送・資材コストの上昇が重なり、価格調整が避けられなくなった。「紀州産の不足による構成比増も影響し、この1年は売れば売るほど赤字だった」(主力メーカー関係者)。近年のコスト高騰を踏まえると、価格転嫁にはなお余地があるものの、売上への影響を見越し、買い控えが起きにくい水準に改定幅を抑えたとみられる。
市場動向では、連日の猛暑もあり今夏の梅干需要は各社とも前年を上回って推移したが、値上げ分の上乗せと、米不足による落ち込みの反動増とみる向きもある。関係者は「品不足で数量ベースでは好調とは言い難い」と語る。
地元JAも「年々需要は厳しくなっており、今期の販売高も例外ではない」とし、実際に動いたボリュームは平年並みとは言い切れないようだ。消費者離れの不安は尽きないが、現状では値上げなしでは対応が難しい状況だ。
紀州産のメーン購買層は国産志向が強く、メーカー側も国産を守り育てる姿勢を明確にしている。一方で、物価高による買い控えや、価格帯やカテゴリーの異なる商品の選択が増える可能性は否定できない。天候次第では供給不安が長期化する可能性もあり、消費者の節約志向も一層高まるなか、国産・紀州ブランドの価値をどのように訴求し続けるかが今後の焦点となる。


