夏の猛暑の影響で医療・介護業界では新たに「猛暑フレイル」という言葉が生まれた。高齢者が外出を控え、食欲が減退したことで、秋になると急速に筋肉や体力が衰え、誤嚥が進行する。
▼「フレイル(虚弱)」とは健康と介護の間の状態を指す。現在、日本のフレイル人口は280万人、その予備軍は高齢者の3分の1と推定される。高齢化が進む日本では要介護人口が年々上昇しており、国も本腰を入れてフレイル防止に取り組み始めた。
▼日本が欧米に比べて寝たきり老人が多いのは、医療制度の違いもあるが、筋肉に必要なたんぱく質の摂取量が根本的に不足している。国が推奨する1日当たりの摂取量は、成人男性60g、成人女性50g。コロナ禍のたんぱく質補給ブームでプロテインなどの市場は急拡大したが、現在はひと段落している。市場を支えるのは補給意識の高い一部消費者のみで、多くが再び元の生活に戻った。
▼フレイルをテーマに講演した医師は「日本人に必要なのは貯金より貯筋」と「たん活」を推奨する。たんぱく質摂取は、全世代が日ごろから意識すべきことであり、それを喚起するのが食品業界やわれわれの務めではないだろうか。