23年に就任以降、企業改革を推し進めてきた菊水の春名公喜社長。生産では、季節変動の多いチルド麺の平準化を図るため、計画生産と設備投資、外部化に尽力。同時に常温、冷凍麺の開発と販売拡大に力を入れた。また改革スピードを上げる組織に編成するとともに、伊藤ハム米久ホールディングスの一員として人事制度を見直した。春名公喜社長に、最近の取り組みの成果を聞いた。
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――上半期を振り返って。
春名 4~8月の累計は、NB事業の伸長で全社売上は前年をわずかに上回る一方、コンビニ向けデリカ(調理麺)事業が前年を割った。春夏の売上構成比が高い冷やし麺が北海道内では好調だったが、道外は7月中旬以降に需要が減速して低調、と地域差があった。道外の減速要因は精査中だが、猛暑の長期化により湯を沸かすことが敬遠されたことが影響したと推測している。その分、調理済み商品、うどんや焼きそばは伸長した。有名店とコラボした「名店の逸杯」は苦戦したが、市場シェアNo.1の玉ラーメン、ラーメンスープ単体は好調で、価格や選択が自由にできる点が受けているようだ。
――下期の販売方針を。
春名 気候変動に柔軟に対応して、道外の冷やし麺の販売時期を9月末までに統一し、一部商品は10月中旬まで延長した。北海道でも近年は高温が続くため、試験的に一部を9月まで販売する。「名店の逸杯」は巻き返しを図るために、道外有名店とのコラボを拡大するとともに、シリーズ初のそばの名店監修商品を発売した。また外食発のトレンドを捉えた「麻辣湯麺」などの商品化も行った。
――売場拡張の取り組みの成果は。
春名 家庭用商品では、常温や冷凍商品、アルミ鍋やレンジ対応容器付きの簡便商品を強化している。常温では、今秋にアルミ鍋付きのスンドゥブうどんを新発売。レンジ調理の容器付き冷凍調理麺は、まずは道内限定で6月からテスト販売を開始、8月から本格的に札幌ラーメンとあんかけ焼きそばを発売した。常温、チルド、冷凍の3温度帯でそれぞれ露出を拡大して、売場を広げていく。業務用は焼きそばに加えて、生めんが伸長。ラーメンスープを含むメニュー提案で採用が増え、道内外で裾野が広がっている。
道内はある程度末端まで広げられているが、人口減少を考えると各カテゴリーで売場拡張が必須、道外は面の獲得に力を入れて攻勢したい。
――生産の効率化について進捗状況を。
春名 自社の強みは開発力と品質管理能力、グループシナジーを活用した全国へ供給可能な物流。そう考えると、商品をすべて道内で作る必要性はない。自社工場は、札幌ラーメンなどのコア製品に集中して、計画生産で生産性を向上させている。そのほかの商品は柔軟に外部を活用して、持たない経営を強化している。
単に生産委託するのではなく、「共創企業」として販売動線に近い4社と連携を開始した。8月から順次立ち上げ、来春に向けて段階的に拡大する。将来的な生産拠点の再投資は、需要規模と回収性を確認の上で最適配置を行いたい。
――組織整備、人材育成への取り組みと課題は。
春名 4月に「商品開発センター」を設立。現場の知見と顧客ニーズを起点に企画、開発を加速させるもので、開発、工場、営業担当者が兼任で参加し段階的に人員を増強して、外部拠点の立ち上げと品質の安定化を推進している。また人事制度の改革を実行してグループ水準に改善した。
企業の継続には、価値創造への投資が不可欠。そのために人的投資に注力するための原資が必要であり、生産性をしっかりと上げる。選択と集中が必要だが、では集中する以外は捨てるかといえばそうではなく、価値創造型のファブレス化で競争力を向上させる。収益性を上げて最適な場所に投資するというスタイルに、今後舵を切っていくことになるだろう。