「ミルクの未来を考える会」 需給安定へ国が新方針 意見交わす

一般社団法人日本乳業協会は6月9日、第4回「ミルクの未来を考える会」を開催。農林水産省牛乳乳製品課の中坪康史牛乳乳製品需給対策室長が「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針(以下、酪肉近)」の概要を解説し、委員やメーカー関係者らと今後の需給動向や課題について意見交換した。

酪肉近は、今後の政策や業界の方向性を示す国の基本方針で、5年ごとに見直しが行われている。新方針では、2030年度の国産生乳の年間供給量目標を、2023年度と同水準の732万tに設定。将来的には780万トンを目指す。人口減少や高齢化による需要減が想定される中、乳飲料や加工乳は減少傾向が続く一方、無調整牛乳やバター向けは微増が見込まれる。

課題としては、バター生産増に伴う副産物である脱脂粉乳の需給ギャップが挙げられた。今後5年で脱粉の余剰が4~5万t積み上がると見込まれ、対応が急務となる。チーズは、モッツァレラやカマンベールなどソフトタイプは堅調だが、プロセスチーズは減少が見込まれる。

中坪室長は「需要があってこそ生産が成り立つ。酪農の持続的な経営には消費拡大が不可欠」と強調。Jミルクや業界団体と連携した消費喚起策、ヨーグルトや脱脂粉乳活用商品の開発、輸出強化などを挙げた。

輸出では、2030年度に883億円の達成を目指す。現在は粉乳やアイスが中心だが、今後はロングライフ(LL)牛乳の構成比を高め、海外市場の開拓を加速させる。参加者からは、インバウンドでも人気の高いヨーグルトの賞味期限延長による輸出拡大、インナーケア・機能性訴求商品に期待する声も寄せられた。