カクヤスグループ 「ひとまいる」に社名変更 酒類偏重から物流企業へ

酒類販売大手のカクヤスグループは、7月1日付で社名を「株式会社ひとまいる」に変更する。新社名のもと“ビール1本から1時間枠で即日配達”できる物流機能の強みを軸に据え、食材・調味料の取り扱いを増やすなど業容の拡大を図る。

佐藤順一会長は「飲酒人口のさらなる減少が加速するなか、酒類販売の一本足打法から脱却を目指す」と力を込める。

M&Aで食材の取り扱い拡大

5月28日に都内で記者会見を開き、社名変更の背景や中期経営計画を説明した。事業会社のカクヤスが展開する「なんでも酒やカクヤス」は東京23区を中心に多種多様な酒類を販売。自社の店舗や物流センターを拠点にした配達・配送網に強みを持ち、売上構成比は飲食店向けが71%、宅配が16%と配達関連が9割近くを占める。

ただしアルコール飲料の総需要は1990年代後半から長期的な減少傾向にあり、そのトレンドはコロナ禍を経て加速。佐藤会長は「大手居酒屋チェーンの売上はまだコロナ禍前の7割程度にしか回復していない。なおかつ酒離れが急速に進んでいる。あるアンケート結果によると、1年間にお酒を一滴も飲まない人の割合がコロナ禍を経て大幅に増えたようだ」と環境の変化を説明。

今後に向け「酒類に偏重とした事業構造を見直し、グループの強みである物流を前面に押し出す。商品の受注・配達・決済まで一連のサービスを提供する販売プラットフォーム企業として成長を図っていく。われわれにとって酒屋の看板を少し後ろに下げる大きな決断だが、これから第二の創業期として新たな基盤を構築したい」と語った。

新社名の「ひとまいる」は、「人財」によるきめ細やかな対応、ご期待に応えて「参ります」、そして自社の配送網を駆使して「ラストワンマイルをお届けする」との意味をかけ合わせた。

中期経営計画の最終28年3月期は売上高1700億円(25年3月期1345億円)、営業利益40億円(同17億円)を計画し、5年後の30年3月期は売上高2300億円への飛躍を狙う。

成長のカギを握るのは、事業再編による取り扱い商材の拡大だ。グループ内のカクヤスは酒類販売を充実させ、明和物産は乳製品に加えて食材や調味料の取り扱いも始める。

前垣内洋行社長兼CEOは「新たな食品カテゴリーについてはM&Aで販売会社をグループに取り込みたい」と展望する。

加えて外部との連携も強化。一連の物流機能を提供しながら他人物配送も拡充する。エリア戦略では関西や九州での事業拡大、さらに札幌・仙台・名古屋・広島などへの進出も検討していく。

設備投資は3か年で35億円を計画する。DX推進や新たなプラットフォーム化を見据えたシステム開発を中心に予定する。

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